ひとりぼっちのきみたちへ。





phase 06





あの淋しい目が、焼きついて離れない。
けれど恋と呼ぶには酷くおぼろげで、何と表現すればいいのか分からない。



「なるほど。じゃあアスクレイ倒しちゃえば割とすんなり解決しちゃうんじゃないの?」
「けれど、彼はまだ一度も前線に姿を現していません。完全に受身の我々にとってそれは、至難の業でしょう。」
マオの話したルーンガイストの内情に、エルウィンが…というか、誰もがそう考えるであろう案であったが、
ピオスの言う通り。それを実行するにはリスクがあり過ぎる。
彼らが不在の際に一気に攻められたりでもしたら。ルーンガイストが何万という兵力を持つのに対し、
所詮彼らはたったの7人。いくつかの部族は協力してくれるようにはなったが、それでも戦力の差は如何ともし難い。
指輪の力と、ピオスの作戦と。酷く危うい均衡の中、彼らは勝利を重ねてきていた。

「それに。」
それまで押し黙っていたブランネージュが、不意に口を開いた。
「私に指輪を託してくれた人が言っていた。…あれは、アスクレイではないと。」
あれは、アスクレイじゃない。もっと邪悪な…この世界にとって、害でしかないものだ。”
彼の言葉が蘇る。彼に指輪を託されて、ルーンベールを抜け出して。
シルディアに…ヴァイスリッターに身を寄せてこれまで戦ってきたが…彼は、どうしているだろうか。
「確かに、アタシの見たアスクレイは仮面をすっぽり被ってたから…別人が成りすましてるって可能性もあると思う。」
「ガラハッドは彼が話す4勇者の話を信じて、彼をすっかり信用してしまっていたけど。…でも、彼の魔力は異常だった。
 あんな、身の毛のよだつような魔力の持ち主が4勇者の一人だなんて…私には信じられない。」
緩く首を振る仕草に、銀髪の綺麗な髪もしゃらしゃらと揺れる。その髪は以前と違い、肩ほどまでしかない。
それは彼女なりの、決意の表れだった。祖国と…弟と戦う、過酷な運命への。

「あーあぁ!アスクレイにガラハッドにケイロン!なんなのこの山積みの課題!」
テーブルに突っ伏してエルウィンが叫ぶ。隣に座るリュウナが宥めるが、彼女も似た様な心持だろう。
「こちらから仕掛けることが出来ない以上、出来ることを一つずつ対処していくほかないでしょう。彼らを一度に相手にす るには…戦力的にも不安が残りますし。指輪の力とて、万能ではないのですからね。」
ピオスの言葉に、皆一様に溜息を吐く。見えない。終わりが、見えない。
果ての無い戦いは、確実に。彼らを蝕みつつあった。


「それと…あと一人。気になる子が、いるの。」
空気の重くなった今この場で言うべきではないと思ったが、その言葉は自然にマオの口をついて出ていた。
「これ以上誰かいるっていうの!?」
予想通りのエルウィンの反応。他の皆も口にこそ出さないが、目がそう言っていた。
「分からない。今まで、前線では見かけてないから。」
黒い軍服と大剣。普通に考えるならば前線に居ても、おかしくはない筈だ。けれど、見かけない。
彼を見かけたのは、あの丘での二度きり。
「でも…でも。だから…嫌な予感が、するの。」
あの琥珀の目は、悲しいほどに、自分と同じで。だからこそ、怖い。
確信と呼ぶには、酷くおぼろげで。予感と呼ぶには、形を持ちすぎていて。
どっちつかずなこの感情を、どう表していいのか分からない。




…あの淋しい目が。どうにも焼きついて、離れない。






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