ひとりぼっちのきみたちへ。





phase05





その、作戦を聞いたときに。
がつん、と思い切り頭を殴られたような。…そんな錯覚を、覚えた。
…何故。何で、今更。
滅んでしまえばいいと。あんな国、ぜんぶぜんぶなくなってしまえばいいって。本気で、そう、思っていた筈なのに。
何で今更こんなにも心がざわめくの。

―――何で…迷うの。


心に絡みつく思いを抱えたまま野営地を後にして…ふと気付けば、あの丘。
少し顔を上げて…それこそ飛び上がりそうな程に、驚いた。
それは相手も同じだったようで、琥珀の瞳がぱちぱちと瞬く。
「キミ、あの時の…、」
…相変わらずの、淋しい目。以前一度ちらと会っただけなのにその目を印象的だと思うのは、そのせいだろうか。
「…あの作戦、聞いただろう?」
「っ!……。」
微かに冷たい風が、ざあと音を立てて吹き抜ける。その一瞬が、やけに長く感じた。
どうして。何で。何でよりによって今。それを。
「…それが?」
「きみは。…それで、いいの?」
「!……勿論よ。…そんなの…決まってる、じゃない。」
祈るような、どこか縋るような目を見ていられなくて、思わず目を逸らす。
やめて。やめて、お願いだから…そんな目で、見ないで。
「…アタシ、もう…行くから。キミも、早く戻ったほうがいいよ。また、抜け出してきたんでしょう?」
もう耐えられず、無理矢理に話を終わらせる。ろくに挨拶もせずに、駆け出す。


いい筈だ。これでいい筈だ。これでいいに決まってる、のに。
どうして。どうして。

知り合って間もない”仲間”の顔が、頭をちらついて離れない。
エルウィン。ピオス先生。リュウナ。ラザラス。ブランネージュ。カイネル。それから―――ヴォルグ。
戦いの合間に得た暖かな時間が、どうしても、忘れられない。
「アタシ…アタシ、は…、」




ぐっ、と唇を噛み締め、眼前のシルディアを見遣る。
以前までこの国を見るたびに湧いていた黒い感情は―――跡形も無く、消えていた。






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