ひとりぼっちのきみたちへ。





phase04





「先鋒部隊に続いてドレスデン将軍も、ねぇ。随分頑張るじゃないか、ヴァイスリッターは。」
相当な被害が出たにも関わらず、報告を受ける年若い王子の顔に浮かぶのは愉悦。
口端をゆったりと持ち上げて、にたりと音が出そうな程の粘着質な笑みが、どうにもシオンには耐えられなかった。
少し目線を下げる。しかし目を瞑ることも耳を塞ぐことも許されはしない。
これは己の罪。仮面を葬り去ることのできなかった己の弱さ。それがどれだけの人を死に至らしめたのだろうか。

許されはしない。許されはしない。…なんて、罪深い。


「ヴァイスリッターの団員は逃げ出したって聞いてたから、つまらない戦争になりそうだなって思ってたけど。
 うん。やっぱりこうでなきゃあねぇ。そう簡単に手に入る宝なんて、つまらないだけだ。」
「では早々に、次の作戦のご指示を。」
仮面の声に満足そうに、ガラハッドは矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
段々と自分の言葉に溺れるかのようにどこまでも早さを増し、くるりくるりと舞い踊る。
「そうだこうしよう。馬鹿な鼠どもに、罠にかかりに来てもらおうじゃあないか。…シルディアの城壁の外の、精霊の森。
 目障りだから、焼き払ってしまおう。…高慢チキなエルフを助けにきた、鼠どもと一緒にね。」
それでいいかなぁ、と王子が仮面に問う。傍らの仮面はくつくつと…機械音にも似た笑いを微かに漏らし、
彼の策に異はないことを伝えた。
「私は指輪を取り戻せさえすれば、その過程は問いませぬ故。王子のお好きなようになさいませ。」
指輪、という単語に身体が震える。…仮面は、指輪を、そして己を何に使うつもりなのだろうか。見当も付かない。
仮面は言った。『指輪の力なくして、あなたは完成しない。あなたなくして、指輪は完成しない。』
指輪と己が、密接な関係にあるかのような言い方。あの伝説の双竜の指輪と、この無力な自分が?
どう考えても結びつかない、不釣合いな両翼の天秤。

「ねぇ。そういえばそいつはまだ出撃させないのかい?」
上げた目線にガラハッドの視線がかち合ったことで、自分のことを言っているのだと気がついた。
「えぇ。何しろ目を離すと何をしでかすか分かりませんからね。来るべき時まで、きっちりと見張っておかねばならないのですよ。」
「ふうん?まぁいいけど。」
つまらなさそうに此方を見やる赤い瞳が嫌で嫌でたまらなくなって、また目線を床に落とした。




手も足も、自由に動くのに。
心だけが鎖で雁字搦めに戒められたかのように、動けなかった。






next phase05


TOP





Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!