あたまが、いたい。いたくて、いたくて、われてしまいそうだ。
たすけて…たすけて、だれか。…たすけて、
覇王。




「…十代の、デッキ?」
「そうっス。…アニキはこれも置いて、出て行っちゃったんス。」
デュエリストにとって、デッキは魂と同義だ。あれ程にデュエルを愛する彼が、デッキを置いていった。
それほどまでに、追い詰められていたということなのか。
「…ボクが預かってるより、覇王くんに持っててもらったほうがいいと思って…。」
「そうか。…分かった。これは俺が預かろう。」



まだ荷物も片付かない部屋で、覇王は十代のデッキを広げる。見覚えのあるカード、ないカード。…前者のほうが多いか。
…ふと、背後に気配を感じて振り返る。
そこには膝を付いて臣下の礼を取るかのように、2体の精霊が控えていた。フェザーマンとバーストレディ。
十代のデッキの中でも、とりわけ長く付き合いのあるHEROたちだ。
『久しぶりだね、覇王。』
『ごめんなさいね。せっかくの再会だっていうのに、こんなことになって。』
精霊の言葉に、覇王は静かに首を振る。
「…いや。お前たちのせいではない。気にするな。」
それでもよ、どバーストレディが続ける。
『あの時、十代の一番近くにいたのはアタシ達だった。なのにアタシ達は何も出来ず…逆に守られてしまった。』
『デュエルに負けたあの時、得体の知れない力が十代に降り注いだ。…無論、傍にいた私達にもね。』
思い出すだけでも身の毛のよだつような恐ろしい力だったと、彼は続ける。
人ならざる彼らをしてそうまで言わしめる力の正体。そしてその力を操る斎王。…一体、何者だというのか。
『推測でしかないけど。十代は無意識の内にアタシ達を守ろうとして…それで自分とカードを切り離してしまったんじゃないかって。』
「十代は、”デュエルができなくなった”…と、言っていたが?」
『あのデュエル以降、十代に声が届かなくなった。姿も見えてはいないようだった。十代は”カードが見えない”と言っていたけれど。』
謎の力からカードへの影響を避けるため、自らとカードを切り離した…結果として、カードが見えなくなってしまった。
しかしながら十代の無意識下で行われた故に、十代にはカードが見えなくなった原因が分からない。
分からないことへの不安から…十代の心に、隙が生じた。
覇王の脳裏に、あの琥珀の瞳が過ぎる。哀しいほどに張り詰めていたあの瞳。
あの瞳の、彼の本来の美しさを奪った力を、斎王を、己は決して許しはしない。追い詰めて、追い詰めて、追い詰めて。
死よりも辛い制裁を!覇王の黄金の瞳が怒りに色づく。

「お前達にとって、十代はまだ、主たり得るか?」
その問いに精霊は薄く微笑んで。
『勿論だとも。』
『そうよ。アタシ達の力を一番解ってくれているのは、あの子なんだから。』
間も置かず帰ってきたその答えに、覇王は頷く。
十代は、一旦切り離したはいいものの、繋ぎ方が分からなくなっているだけ。なら己が繋いでやればいい。
そうして自分達は生きてきた。足りないものを補い合って生きてきた。ならば今回も、そうするだけ。
「…お前達を十代の元へ返してやりたい。…力を貸してくれるか。」
再度の問いに精霊達は笑みを強くする。
黄金の瞳をしっかりと見つめ、深く深く、頷いた。







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あとがき。

久々ホワイトガッチャ更新。お待たせしました…。
詰まった。非常に詰まった。ここまで順調にきていただけに詰まったときの反動がすさまじかった(笑)
ヒーローたちにとって、十代と出会えたことは幸運だと思うのです。だってあんなデッキ常人には使いこなせない(笑)
そもそも融合使い勝手悪いんだよ!OCGは沼地とかいるからまだいいけど、アニメは出てこないし。いや、T氏使ってたかwww
そして蘇生もできないしな、融合モンスター。そのうえ今は外道とかきもいのとか入ってるしな。絶対ぇ回らないってwww

(2008.02.20)






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