白と黒。
黄金と琥珀。
異なる対が、邂逅する。




幽霊か何かを見るように覇王のことを見つめて…それからああ、そっか、と呟いて。
「…留学、終わったんだな。」
こつり、こつり…五歩ほどこちらへ歩を進めたところで十代は立ち止まる。
「久しぶり、覇王。」
「…ああ。」
彼は幼い時分から、赤が好きでいつも身に付けていた。なのに今、彼がその身に纏う色は白。
変わったと感じるのは服装だけではない。
纏う雰囲気、瞳の温度。
特に琥珀の瞳は恐ろしいほどに凪いでいる。ぴたりと空気が静止し、張り詰めたようなその目。


「後ろの3人から大体の事情は聞いた。…うさんくさい組織に入って一体何をしている、十代。」
地を這うような低い声。常人ならば逃げ出していきそうなそれにも十代の瞳は揺るがない。
「うさんくさいって、酷いなあ。真実を見ずに物事を評価するなんて、覇王らしくないよ?」
「今のお前を見れば、普通でない力が働いていることくらい直ぐに分かる。」
覇王の追及に、十代は笑みすら浮かべて。
―――十代なのに、十代とは程遠い。外見的なことだけではない。言葉の端々からもそれが伺える。
「ああ、確かに”普通”じゃなかったよ、斎王様のお力は。」
「斎王…?」
訝しげに名を繰り返す覇王に十代はふふ、と可愛らしい笑みを浮かべて。
「そう、斎王様は凄いんだよ。デュエルができなくなった俺を助けてくれて、それで前よりももっと
 強くしてくれたんだ!だから俺、斎王様のお手伝いをしようって。斎王様のお力になろうって決めたんだ!」
恍惚とした表情すら浮かべて、朗々と話す十代。
また何事かを喋りだそうとする十代を、覇王が遮る。
「…それは本当に、お前が決めたことか、十代。」
「……何言って、」
「それは本当に、お前が望んだことか?」
「っ、そんなの……あたり、まえ…!」
凪いでいた瞳に、初めて波が生まれる。
動揺を見せる十代に、覇王は言い聞かせるかのように問いかける。
「違う筈だ。…もう一度、最初からよく考えてみろ、十代。…それは本当に、お前が望んで決めたことか?」
「……、っ……!!!」
いよいよ苦痛に頭を抱え込んだ十代。もう一押しか、と声を掛けようとしたところに、
十代の背後から別の声が響いた。

「十代!どうしたの!?」

十代と同じように白の制服に身を包んだ女子生徒が、頭を抱える十代に駆け寄り、肩を支える。
「明日香!」
「明日香さん!」
覇王の後ろで事の成り行きを見守っていた吹雪や翔が彼女の名を呼ぶ。
明日香と呼ばれた少女は彼らを氷のように冷ややかな目で睨みつける。
「何をしに来たの?」
「十代を返してもらいに来た。」
問いに答えた覇王の声を聞いて、明日香はそこで初めて覇王の存在に気が付いたようだった。
敵意をむき出しにして、また明日香が問う。
「…あなたは?」
「…今日はよく名乗る日だ。……俺は覇王。十代の双子の兄だ。」
その答えには、明日香も驚いたようだった。表情には努めて出さないようにしているようだったが。
「十代は”光の結社”にとって必要な人間なの。それに、十代は自ら望んでここにいるのよ?返してなんて、筋違いもいいところだわ。」
「…どうだか。」
心底見下したような覇王の態度に噛み付こうとして、思いとどまる。
「今はまだ時ではないと、斎王様はおっしゃっていた。…いずれ、決着を付ける時がくるでしょう。」
そう言い残すと、未だふらつく十代を支えてホワイト寮へと帰って行く。

扉が閉まるその一瞬、十代が振り返る。
そうして、此方を見る瞳は―――紛れも無く、十代そのもので。
…まだ、手遅れではない。
「……十代。」

必ず、取り戻す。







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あとがき。

ようやっと覇十本格再会。
やーべー、白十代楽しすぎる。受け側書きやすいとかあんまりないからちょっと新鮮。
そしてはとさんは明日十も好きなんだZE。あすりん可愛いよあすりん。

でも覇王様の尋問が一番楽しかった。
てゆうかなんでマイパソは「愉しい」で変換しようとするのかな、かな?

(2007.12.26)





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