あなたを永遠にこの腕に抱く為なら、なんだってしましょう。





春先の縁側は、とても暖かい。春特有の柔らかな日差しがめいっぱい降り注ぎ、世界を温もりで満たしてくれる。
子供はそんな暖かな世界で、昼寝をしていた。ああまるで、猫みたいだと、明日夢は思う。
ブランケットを手に子供の隣へ座る。ふんわりとした桜色のそれを子供と自分に掛け、明日夢もごろりと寝転がる。
たまにはこんな午後も、悪くないだろう。



すぅ、すぅ、と寝息が間近に聞こえる。子供の寝顔は本当に安らかなものだった。
「戦人。」
小さな声で呼びかけて、そっと髪を梳く。子供が起きないのを確認して、明日夢は言葉を続けた。


「お父さんを、許しちゃ駄目よ。」


子守唄でも聴かせるように優しい声で、寝物語でも聞かせるかのように穏やかな表情で。
けれど明日夢が紡ぐのは、そのどちらでもなく。
暗く、冷たい、呪詛の言葉。

「いつも話を聞いてくれないお父さんを、許しちゃ駄目よ。」

「いつも約束を守ってくれないお父さんを、許しちゃ駄目よ。」

「おもちゃを買ってごまかそうとするお父さんを、許しちゃ駄目よ。」

「誕生日にも帰ってきてくれないお父さんを、許しちゃ駄目よ。」


「私たちだけを愛してくれないお父さんを、許しちゃ駄目よ。」



触れた子供は、とても暖かかった。日の光を一身に受けて、世界に愛されているかのような。
その子供にこんな冷たい言葉を刷り込むことに良心の呵責を覚えないでもない。
けれど、そう。この子をこの腕に抱くためならば。
永遠に自分だけのものにするためならば―――なんだって、しよう。
彼の憎悪の中で、自分は永遠に生き続けるのだ。そこがどんなに暗い世界でも構うものか。
この子と共に在ることが出来るなら。地獄だろうと構わない。

「戦人。」

「ね、戦人。」


「戦人。ね、よく聞いて。」



「………お父さんを、許しちゃ駄目よ。」










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あとがき。

Q どうしてこうなった?
A 明日夢母子は縁側でにゃんにゃんしてればいい→そんなん見たいよ→でも俺ヤンデレしか書けない→いいじゃないヤンデレ縁側
  …という某ヒラさんとのついったでの会話の結果

(10.11.13)





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