例えばそれは、閉じられた猫箱の中。





俺は、あいつらの駒だ。

この狂った盤上で壊され続けることが、俺の役目。
それは他の駒も同じなのだけれども、いつも俺は最後まで生き残るから、他の駒よりも一仕事多い。
壊されるのが早いか遅いかだけの違いだろうなんて言わないでくれよ。誰が好き好んで血みどろの死体を見たいと思う?

そんなわけで、今回のゲームは大分びっくりした。
今まで最後まで残されてたのが、今回はいきなり第一の晩なんだからな。
そして、それよりも吃驚したのは、あいつが壊す側になったことだった。…まぁ、壊し方は中途半端だったけどな。
今まで散々壊されたり、それを目にしてるんだからしょうがないとも思うけど。
でもさ、あの性悪魔女共も言ってたろ。煮え切らないような壊し方が一番、辛いってさ。
壊すのなら、一思いに粉々にすればいい。…そんなことがあいつにできるわきゃねぇってのは、俺が一番分かってるわけだが。
だって、そうだろう。

あいつは、俺だったんだから、



俺は、あいつの駒だ。

あいつに代わってゲームを進めるのが、俺の役目。
何でゲームを進めるのに代わりが必要なのかって?俺が知る訳ない。主にも分からないことが、駒の俺に分かるはずないだろ?

そんなわけで任されたゲームだったけど、自分で言うのもなんだがまぁ酷いゲームだったな。
分かってるさ。俺の自業自得だ。俺の甘さが招いた事態だ。それは、言い訳しねぇよ。
でもさ、あそこで切り返させてくれたってよかったじゃねぇかって思うわけだ。
確かにルールに近づきすぎた一手ではあるが、それでもロジックエラーでゲームが中断するより遥かにマシな一手だ。
それを、あいつは封じた。俺という駒を、かつてのベアトリーチェが蘇る奇跡に賭ける為のチップにしやがったんだ。
その時ぼんやりと思ったよ。あぁ、あいつは、これがやりたかったのかなぁ、ってさ。確信はねぇけど、まぁ間違いないだろうよ。
だって、そうだろう。

あいつは、俺だったんだから。



俺は、駒だった。

じゃあ、今の俺は何なんだろう。
もう俺は駒ではない。(だって俺は全ての真相を、真実を知っている)
そして、プレイヤーでもない。(だって、あいつに全部任せてしまった。)
じゃあ、こうして、ただぼんやりとゲーム盤を眺めている俺は、一体、何なんだろう?

ここは、静かだ。誰もいない。ただ俺一人きりの世界。一人きり?宇宙を構成する最小人数は二人。
なら、一人しかいないこの世界は一体何?世界たり得ないこの世界で、俺は何をすればいいというのか。
…あぁ、これは酷いロジックエラーだ。俺もあいつの事を笑えない。
でもきっと、俺にはここが相応しい。罪には、然るべき罰を。地獄を彷徨い続ければいい。千年という名の永遠を。
こんどこそ本当に誰も助けになんて来れない。この世界には誰も干渉なんて出来ない。完成された、最悪の密室。
俺が迷う間、あいつらには頑張って踊ってもらわなきゃあな。誰にも、俺がここにいることを知られない為にも。
あいつらに悪いかな。でも、しょうがないよな。
だって、そうだろう。

あいつらは、俺なんだから。





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あとがき。

バトバトというか戦人さま散文。スレ下位戦人さんと純情上位GM戦人さまと病み最上位バトラさま。
俺の中のEP6戦人さまを整理してみようと思ったらこうなった。どうしてこうなった。
はとさんはタイトルをいつも最後に付けますが、これに限ってはタイトルから思いついた。
この調子でいつも降ってきてくれないものだろうか。

(10.01.23)





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