happy birthday dear my......





「というわけでケーキよ。」
「日本語くらい正しく使ってくれ、大ラムダデルタ卿。」
突然やってきて意味が分からない、と胡乱げに机に置かれたケーキを見る。
真っ白ふわふわな、生クリーム。それに埋もれるように、或いは押しつぶすように、色とりどりのフルーツが白を引き立てる。
きらきらと姦しい見た目のケーキは、如何にも幼い魔女が好きそうなものであった。
「どうせなんかおかしなモンが入ってんだろ。悪戯のパターンはもう分かってんだよ。」
「失礼しちゃうわ!」
途端に眉を寄せ、頬を膨らませて。分かりやすい感情の変化。まるで、否、本当に幼子そのものの仕草。
「人が折角お祝いしてあげようっていうのに!何よその可愛くない態度!!」
いや頼んでないし。そもそも何の祝いだよ、という言葉を寸でのところで飲み込んだ。これ以上事態をややこしくしたくない。
否もう充分に。ここに己が存在していること事態が厄介な事なのだろうけれど。
「ほらほら突っ立ってないで早く座りなさいよ!」
「いや、ちょっ…!」
有無を言わさず戦人の腕を取り、席へ座らせる。いや俺は別に何も祝って欲しくなんか、と席を立とうとしたが、
背後から両肩に、そっと、手が置かれた。優しいとも言える、手つきだった。
耳元に、口が寄せられているのが分かる。酷く甘ったるい匂いが耳たぶを擽って入り込む。
この世のありとあらゆる甘いものを貪欲に掻き集めて、鍋で煮詰めたような。溶かされそうな、匂いだった。
「…食べないの?」
至極楽しそうな、けれど温度の無いその言葉に、戦人は諦めてフォークを取った。
フォークも、冷たい金属の感触。ただ手の置かれた肩だけが、微かに温かかった。


4分の1ほど食べたところで、フォークを置く。確かにおいしかったけれど、流石に一人の量としては多すぎた。
だが魔女には気にくわなかったのだろう。ちょっと、何残してんの。刺さるような声が掛けられたが、無理なものは無理だ。
けれど魔女はやはり、容赦無かった。ぽつんと置かれていたフォークを取ると、ケーキをざくりと切り取って。
「はい、あーん。」
傲慢に口の端を吊り上げて、ずい、とフォークを口の前まで持ってくる。視線が怖い。無言が怖い。
圧力に負けておずおずとケーキを口の中に招き入れる。…甘い。咀嚼して飲み込んでも尚口の中を支配する甘さに、思わず顔を顰める。
それでもなお、ケーキを差し出すラムダデルタに、うんざりと戦人は呟いた。
「…そもそも、何の祝いなんだよ。」
至極尤もなその問いに、小さな絶対の魔女はにやりと笑った。





「あんたがあたしの玩具になったことの、に決まってるじゃない。」





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あとがき。

ふむ子さま宅の茶会での即興文でした。1時間以上かかってるのに何処が即興なのかというツッコミは断固拒否する。
しかしどうして増えないんだろうか。ラムダのカステラ様好きが公式だからだろjk。そんなツッコミも断固として(ry
因みにはとさん的にはこの二人の間に恋愛感情は欠片も無いよ。人形とその持ち主、そんなイメージ。

(サイトアップ 2009.12.05)





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