飛んで火に入る、何とやら。





最初の惨劇からほどなくして、二人の遺体も発見された。
嘉音と朱志香の後を追っていた郷田が、倉庫のシャッターに描かれた不気味な紋様に気がついたのだ。
…開かれた倉庫の中には、互いに手を伸ばすような格好で息絶えていた嘉音と朱志香。
ような、というのは、本当に彼らが手を伸ばしあっていたか確証が無いからだ。
確かに二人の衣服の袖は互いに向って伸ばされていたが、その中にあるべき質量が無い。
「惨いことをしやがる…腕を切り取るなんて…!」

誰も彼もが絶句した。一日のこんな短い間に八人も殺されるなんて!しかも皆残酷な方法で!
そしてこれで終わりという保障はどこにも無い。次は自分の番かもしれないのだ。
不安と不信が、彼等の心をゆっくりと蝕んでゆく。


ひとまずゲストハウスに立て篭もることになったが、皆の亀裂は如何ともし難いものであった。
嘉音と朱志香殺しに関して、二人を追っていった郷田が怪しいと、絵羽は使用人に対する不信を露にしていた。
何とかそれを取り持とうとする弟妹ともぎくしゃくし始め、とうとう彼女は屋敷の自室に戻ると言い出したのだ。
必然的に、秀吉もそれに準ずることになった。
皆は何度も危険だと諌めたが、ついに彼女が聞き入れることはなかった。
「この中に犯人がいないって、どうして言い切れるのぅ?私達皆、充分に動機があるんだもの。」
そう吐き捨てて、彼女はゲストハウスを後にした。


絵羽と秀吉が通り過ぎた屋敷の玄関ホールに、くつくつと不気味な笑い声が落ちる。
「普段の絵羽叔母さんなら…絶対にこんな愚行は犯さないんだろうけどな。」
支えを失った彼女の、なんと脆いことか。自分も、ベアトリーチェという支えがあるから、その痛みはよく分かる。
「…だからこそ…たまらなく楽しいんだ。そうは思わねぇか?ベルフェ、レヴィア。」
戦人の呼びかけに、二人の少女が姿を現す。鋭い黒髪と、鮮やかな萌黄色。
「ずるいずるいずるいぃ!なんで私のがお姉さんなのにベルフェを先に呼ぶのぉ!?戦人は私よりベルフェが好きなんだそうなんだ!!」
「あーあー悪かったって、悪かったよレヴィ姉。レヴィ姉のことだって好きだって。…頼むからそんな目で見ないでくれよ〜…、」
涙すら浮かべて見上げてくるレヴィアタンに、降参するように両手を上げる。
これから第四の晩だというのに、こんなことで機嫌を損ねられたらたまったもんじゃない。
ベルフェゴールの仲裁もあって、ようやく落ち着きを取り戻した彼女ににっこりと微笑んでやってから、
戦人はゲームマスターとしての顔を再び取り戻す。
「標的は…言わなくても分かるな。一撃で殺すもよし、じわじわ嬲るもよし。お前らの好きにしていいぜ。最後に碑文通りにしてくれりゃあな。」
「承知いたしましたぁッ!!」
「お任せを。ゆっくりじっくり、高見の見物としゃれこむといい。」
それぞれの返答に、戦人は笑みを深くする。稲光に照らされた横顔は、残酷な魔女そのものであった。





高らかな哄笑が、新たな惨劇を呼ぶ。





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