貴方に、絶対の枷を。





「ラムダデルタ。…頼みがあるんだ。」
「なぁあにィ、かしこまっちゃってぇ。まさか『やっぱり魔女は嫌だ』とか言うんじゃないでしょうねぇ?」
問うと、新しき魔女はゆるりと首を振った。
「あんたには感謝してるさ。あんたが認めてくれなきゃ、俺はゲームを引き継げなかった。」
「…解ってるならいいわ。で?それなら頼みってなぁに?聞くだけ聞いてあげるわ。アタシは寛大なの!」
ラムダデルタが茶化すように促すと、戦人は一度大きく息を吐いた。
何かを思い出すように、目を閉じて。それを振り払うように再び目を開いた。

「俺にも。…ベアトと同じ枷を。」


その願い事はラムダデルタにとって、少しばかり意外なものであった。今や全ての真実を知った彼が、何故?
「自信がないのかしら?次のゲームに。」
「そんなことはないさ。…あいつらは必ず打ち負かす。」
静かに、けれどはっきりと紡がれた言霊に、また少し驚かされる。それなら彼が自ら囚われようとする意図が分からない。
彼が己と同じような、永遠に繰り返すゲームを望むとも思えない。
「ゲームに勝って終わらせるって”絶対”の意志がアンタにはある。それなのにどうしてアタシの力が必要なのぉ?」
「…”絶対”に、忘れない為に。」
そこで一旦言葉を切った戦人は、これ以上ないくらいどうしようもなく、情けない顔をしていた。
「ベアトを救えなかったことを。そして今この瞬間も縁寿を苦しめていることを…”絶対”に。忘れない為に。」
「成程ね。…いいわ。それでアンタのやる気が出るっていうなら。」
頭から爪先まで戦人の身体を一通り見遣り、ラムダデルタは彼に跪くよう命ずる。
信じられないくらい従順に、彼はラムダデルタの前に膝を折る。黒のローブが音も無くふわりと舞った。
「やっぱりアンタに枷っていったら、これよね。」
ネクタイを解き、ボタンを二つほど外して、露になった喉元に手を当てる。
「さぁさ、思い出してごらんなさい、アンタの罪を。そしてアンタの罪に相応しい枷を!」
高らかに。謡うようにラムダデルタが宣言し。そうして彼女が手を引いた後、戦人には。…血のように赤い首輪が、嵌っていた。
魔術師の証である、荘厳な黒のローブに、真っ赤な首輪。
エンドレスナインの魔法抵抗力を持ちながら、黄金の魔女。
この玩具は、どこまでちぐはぐになれば気が済むのか!おもしろいから一向に構わないのだけれど!
「これでいいかしらァ?…でも忘れないでよね、戦人。アタシはゲームを永遠に続けることを目的としてる。そんなアタシに、囚われたって事をね?」
「忘れないさ。…それに、囚われたのは今に始まったことじゃない。」
挑発的に見上げてくる戦人に、ラムダデルタも口の端を吊り上げる。そうでなくちゃ。そうでなくちゃ面白くない。
いずれこの魔女もベアトリーチェみたいに、生き人形にしてやるつもりだけれど、そう簡単に事が運んだら面白くない。





…せいぜい、足掻いてごらんなさい。





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あとがき。

黒戦人を書こうと思ってビルダー立ち上げたら何故かラムダとのお話になっていた件について。
おい最初の構想どこいった。
どうもまだアニメ11話の黄金郷を引き摺っているようです。お前はいい加減に首輪から離れろ!

(2009.09.14)





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