この気持ちは、果たして。





手を添えて、ゆっくりとカップを傾ける。こくり、と微かに喉がなったのを見とめて、戦人は一旦カップをテーブルに置いた。
その一連の動作を。じぃっ、と音が出てもおかしくないくらいに見つめていたドラノールの視線に気付く。
彼女の金の瞳に焼き付けようとするかのようなその視線が酷く気恥ずかしくて、そそくさと自分のカップを取る。
「…まるで、長年連れ添った夫婦のようデス。」

戦人は盛大に紅茶を噴き出した。


「いやいやいや!俺と!ベアトの!どこをどうしたら夫婦に見えるんだよ!?」
「雰囲気が、としか言えず申し訳ないのデスガ。見た率直な感想を述べたまでデス。」
「そうですね。私も思います。とてもお似合いですよ。」
ドラノールだけでなくワルギリアにまでそう言われ、戦人はがっくりと肩を落とす。
二人は知らないかもしれないが。かつて全裸に首輪で靴にキスさせられた相手とお似合いと言われて嬉しいだろうか。
多分答えは否だ。
「俺…こいつのこと、そういう…恋愛感情で見たこと、ねーし…。」
「あら、無自覚なのですか?それは末恐ろしい。」
ほっほっほ、と悪びれずに笑うワルギリア。無表情で紅茶を啜るドラノール。
…敵わない、とばかりに、戦人はとうとう机に突っ伏した。
「俺に、全力でぶつかってきてたってのは、分かる。何かを訴えようとしてるってのも、分かる。…それが何かってのは…
まだ、分かんねぇけど。」
「そして貴方は、彼女を救おうと考え、行動してイマス。…これは、恋ではないのデスカ?」
「………さぁ、な。それに、救うって表現は違う。…結局殺すことに、変わりはないんだからな。」

酷く複雑なこの感情を、自分でもどうしたらいいのか分からない。
勿論、ベアトのことを許すつもりはない。あれだけ、残酷なことをしておいて。…許される筈が、ないのだ。
なのに自分は何故、彼女を安らかに逝かせてやろうとしているのだろう。
憎いのだったら、もっと違う方法で、残酷に屠ることもできるのではないだろうか。
安らかに…などと考えていること自体。家族への、親族への、妹への裏切りではないのか。
「分かんねー。」
突っ伏したまま、ベアトを見遣る。相変わらず無反応無表情。
せめていつものように下品に高笑いでもしてくれたなら、こんな魔女に恋なんかするか!と、否定できただろうに。
けれど彼女は、未だ物言わぬ人形で。そして、あの耳に障る笑い声を懐かしく感じる自分が、確かにいて。
「…分っかんねー、や。」
この気持ちを、どう昇華したらいいのだろう。





…果たして恋と呼んでも、いいのだろうか。





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あとがき。

またはとさんの悪い癖がでました。ドラバトを書こうと思ってビルダー立ち上げたら、何故かバトベアになりました。
だから何でだよ!まったくもってはとさん意味が分からないというお声が以下略
ドラちゃんに「まるで長年連れ添った〜」を言わせたかっただけ

(2009.09.04)





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