その笑みはきっと、変わらないのだろうけど。





「これより、う……戦人様にお仕えさせていただきます。…何か、ご用命がありましたら、なんなりと。」
そう言って臣下の礼をとる煉獄の七姉妹が長女・ルシファーに新しき魔女はにやりと笑う。
口の端から、八重歯が覗く。
「お前今右代官戦人〜って、今までどおりフルネーム呼びつけにしようとしたろ?」
「そ…!そん、…そのようなことは!」
そんなことあるわけないでしょうッ!と怒鳴りつけようとするのを、すんでの所で留まる。
いくら傲慢の名を冠すとはいえ、主に怒鳴りつけるなど、家具として失格もいいところだ。
「…別に俺は構わないけどなぁ。お前に戦人様とか言われても。こそばゆいし。」
「ば、とら…様は!既に我々の主です!家具が主を呼びつけにするなど前代未聞ですッ!…今までとはもう違うのよ!
 あなたはもう少し、己の立場というものを考えたほうがいいんじゃないのかし、ら………。」

「……。」
「………。」

明らかに出てしまった地というか、今までの癖というか。とにかく常識的に考えて後半は紛れもない失言であった。
短くない沈黙の後。主は唐突に噴出し、腹を押さえて高らかに笑う。品がございませんよと傍に控える執事が諌めるが何処吹く風。
まずい。これはまずい。非常にまずい。あの探偵や異端審問官とやらにでも差し出されかねない。
しかし主は一頻り笑った後。とても、とても満足そうな声で、呟いた。
「いいさ。お前は。それでこそ、『お前』なんだろう?傲慢の、ルシファー。」
「戦人、様……。」
静かな、瞳。全てを飲み込み、打ち勝つ、その色。漆黒の瞳が、己を見据える。
「お前は…お前でいてくれれば、それでいい。変わらないでいてくれれば…それで、いい。」
確かに己を見ているにも関わらず、その視線は、どこかもっと遠くへ向けられている気が、した。
あぁ、分かる。それはきっと、嘗ての主。彼の真実を待てずに消えてしまった―――嘗ての、主に。
第4のゲーム以降のあの変わり果てた姿を気に病んでいたことも…己は知っている。だからこその、言葉。

変わるな、と。せめて己が打ち破る最期のその時まで。―――そのままで、いろと。
…なんて、傲慢な。…これ以上ないくらいに、己に相応しい言葉じゃあないか。

「…ご命令ならば。それを戦人様がお望みならば。変わりません。…消えません。絶対に。」
「おう。」
変わらぬ笑みに乗せた短い返事。
それに、安堵と同時に…酷く、悲しくもなるのだ。





あなたはどんどん私を置いて、変わっていってしまうじゃないの。





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あとがき。

はいついにやらかしました突発部屋!そして何故第一弾がバトルシ!相変わらずはとさん意味が分からない!
そんな皆様のお声が聞こえてきそうです。もっともだと思います。ほらっでも杭の日だからッ!
でも…ごめん 傷が深すぎてベアバト書けなかってん…もう少し…もう少し 時間を 下さい
ドラバトとかワルバトとかのが書けるかもしらんね 前者はまず間違いなく戦闘描写絡みになりそうなのが怖いけど

(2009.09.01)





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