望まぬものばかりを手にし続けたお前が本当に求めるのは、そんな力か。
違うだろう、シオン。
腹の底に直接響いてくるような爆音が、シルディアにこだまする。
絶対、という言葉がもろくも崩れ去っていく、絶望の音。
「馬鹿な…!」
「…っ、シオン…!!」
いかなる兵器を、魔法をもってしても傷つけることの叶わなかった城壁が、たった剣一本によって破られようとしている。
…殺したくないと願っていた筈の、少年の剣によって。
二度目の爆音。
次で破れる…そう確信したカイネルは刀を携え、城門の前に降りる。
彼を止めるならば自分が。
それは黒馬に乗った彼を戦場で見つけた時から、渦巻いていた感情だった。
単なる義務感や、正義感などでは、決してない。
彼のためを思った行動ですらない。
エゴを塗り固めて出来た欲が、己を突き動かそうとしている。
それでも…彼を止めなくてはならない。
予感めいた確信が、そう告げる。
そして遂に、三度目の爆音。
カイネルの銀の髪を、土煙が玩ぶ。
からり、からりと城門の破片が転がる音。
そうして、土煙の向こうから現れた人影は、酷く無表情で。
まるで無機質な、人形のようだった。
「…そんな力が、お前の求めるものか。」
「……。」
「違うだろう、シオン。」
抜き身の刀を構えると、自分を敵と見なしたのだろう。シオンも剣を構える。
これから命のやりとりが始まるというその時に、脳裏に浮かぶのはあの甘い笑顔。
剣よりも、いっそ編み物棒でも持っていたほうが似合うんじゃないか。
そんな風に思ったことを、懐かしさとともに思い出す。
何もない…からっぽの彼の顔を、睨み付ける。
あの笑顔を取り戻せないのなら…いっそ、己の手で。
(…けれどそうして俺は、お前を取り戻す。)
お前は死ぬかもしれないが、望まぬ力に縛られ続けるより、ずっと幸せだろう?
(待っていろ、シオン。)
地を駆ける音の後、金属同士がぶつかり合う甲高い音。
悲鳴じみたその音が、けれど彼の愛情だった。
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あとがき。
どうして私のカイシオはこうも殺伐としてるんでしょう。(切実)
てゆか、カイシオに限ったことじゃないけど…。甘々ってどうやったら書けますか?(凄く切実)
まぁそんなカンジで小説版設定です。読んだ方ならお分かりですが、某エルフさんと某竜人さんは完全無視です。(ひでえ)
だって小説版なぞってったら兄さん、グラビティスラッシュ一発で撃沈しちゃうもの。
剣一本で獅子のたてがみ破るとこはサイコーに燃える。萌えを除けば一番好きなシーンです。
愛しの某佐伯さま(某の意味無ぇ)に捧げようとカイシオを書き始めたはいいが、甘さのかけらもなくなりました。
はとさんの手にかかれば、どんなにラブラブしてるバカップルでも殺伐とした執着カップリングに早変わり。
…これはこれで一種の才能?(開き直るな)
…佐伯さま、こんなカイシオ、いります…?