「きっとね、それはこれからも変わらない。」
伏目がちにそう呟く彼女は、同性である自分からみても、綺麗だった。
作戦の打ち合わせやらで、時折光風館を訪れることがある。
ヴァレリアのエルフの少女…エルウィンと出会ったのも、その時だった気がする。
自分がエルデから来たと知るやいなや、矢継ぎ早の質問攻め。
アストライアのエルフは閉鎖的だったけど、ヴァレリアではエルフってこんなカンジなのかしら。
(後々ゼロに聞いたら、『あんなのエルウィンくらいだよ』って苦笑いしてたけど。)
「で?で?最近どうなのよ、キリヤとは!」
「ど、どうって…。あああアイツとはべ別に、そんなんじゃ…!」
「またまたぁ〜。ホントのこと言いなさいよ〜。」
こうやってエルウィンと話していると、時たま異世界にいることを忘れる。
激しい戦いの中、数少ない憩いのひと時。
いつもエルウィンにしてやられているので何とか言い返そうと出た、何気ない一言。
「そういうエルウィンこそどうなの?片思いの人とか、いないの?」
「…いるよ。」
少し躊躇い気味に、けれどきっぱりと彼女は言い切った。
「…初耳。」
「そうだね。何だかんだ言ってシーナには、話してなかったもんね。」
いつもきらきら輝いている彼女の表情が、はっきりと分かるほどに翳った。
…きっと、悲しい恋なのだろう。
「シーナも知ってる人だよ、相手。」
「…ルミナスナイツの?」
「一番最後に転がり込んだ、あのお馬鹿さん。」
「…ゼロ?」
世界を見守る者。白と黒の翼を持つ者。
キリヤやソウマが言うには、ゼロは元々エルウィン達、ヴァイスリッターの仲間だということだけど…。
「シーナにも見せてあげたいな、昔のゼロの笑顔。きっと惚れちゃうんだから。」
「エルウィン…。」
「少し遠慮がちにね、でもすごく…すごく柔らかく、笑うの。」
目を閉じて、幸せそうに語る。
その瞼の裏に映る笑顔は、一体どんなものなのだろう。
「…ホントに、好きなんだね。…ゼロのこと。」
「ダメなんだよねえ。勝率0の戦いなんだけど…そんな戦況いくらでもひっくり返してきたからさ。
…期待、しちゃうんだよね。」
―――いつか自分に、あの笑顔を向けてくれるのではないか。
「名前が変わろうが羽が生えようが、私はシオンが…ゼロが好き。
きっとね、それはこれからも変わらない。」
伏目がちにそう呟く彼女は、同性である自分から見ても、綺麗だった。
「シーナも頑張りなさいよぉ。幼馴染だからって油断してると、あっという間にかっさらわれちゃうんだから。」
「だから!キリヤとはそんなんじゃないって…!」
…いつか。
いつか自分に、あの笑顔を向けてくれるのではないか。
あの子に向けられていた、あの笑顔を。
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あとがき。
ゼロさん参入記念第一弾。シーナたんとエル。
個人的にこの2人がきゃぴきゃぴいってると嬉しい。
こんなカンジで、涙と風のヒロイン中心に書いていきます。