"Down the Rabbit-Hole"

落ちてしまったアリスは、二度と戻ってきやしない。





視界が霞む。はっきりしない世界にかぶりを振ってみるけれど、それでもやはりぼやけたままの世界。
熱いというよりかはもう、身体が焼けてしまいそうな。熱い、痛い、気持ち悪い。
それらの感覚を全て無視して、十代は立ち上がった。戻らなければならない。ただその一心で。
「…戻らなきゃ、」
「戻る?どこへ戻ろうというのかね?」
唐突な応え。返されるはずがないものが返ってきたことに、慌てて意識を集中させる。
視界に映る黒い人影に、十代は隠そうともせず盛大に舌打ちする。よりにもよって、こんな急いでる時に!
「彼も言っていたろう。君はこの町から一歩も出ることは叶わない、とね。」
「ふざけるな!お前に付き合ってる暇は無いんだよ!そこをどけ!!」
大声を張ってみても、虚勢にしかならない。そんな事は十代自身が一番良く理解している。そしてそれに気付かない相手ではない。
口の端だけを歪める、嫌な笑い方。目から表情が汲み取れない事がより一層の不安を煽る。
「ならいつものように力で屈服させてみたまえ。…尤も、今の君にそれができればの話だが。」
「……ッ!」
今、ディスクを展開させるのは簡単だ。けれど今のこのコンディションで平常のデュエルが果たして出来るのか。
焼け付くような身体の感覚は酷くなるばかりで、痛みが正常な思考をさせてくれない。止まりそうになる脳の回転を維持することだけで精一杯だった。
けどやるしかない。十代に与えられている解決策とは、いつだってデュエルをするというそれ唯一のみであったから。
絶望にも似た焦燥感に後押しされるがまま、ディスクを展開しようとした―――その時。後ろから、両肘の辺りを何者かにがしりと掴まれた。
突然の拘束に身体を捩って振り向けば、そこには目の前にいたのと同じ顔。視線を元に戻してみてもやはり同じ顔。
けれど…その背後から、横から…次々と、同じ人物が、湧いてくる、湧いてくる、湧いてくる!
「君にとって相手を屈服させる手段は、デュエルしかないかもしれないが、」そのうちの一人が言う。
「我々にとっては、そうではないということだよ。」また別の一人が、同じ声で続ける。
伸ばされた手が、十代の下唇を辿る。彼らには似つかわしくない、酷く優しげな仕草だった。
「今日は我々が、君を屈服させる番だ、十代。」
こめかみに一筋汗が伝うのを感じる。火あぶりにされているような感覚の中で、それはとても冷たく感じられた。


「やめろッ!…なせ、離せぇッ!!」
黒のインナーを人ならざる力で引き裂かれて、十代は何をされるのかを悟る。首筋を、胸元を、脇腹を、無数の手が這う。
手袋でも皮膚でもない感触。人の温かみを持たない手の侵略に抵抗を試みるが、腕の拘束は振り解けそうにない。
腰を曲げて手から逃れようとする十代の髪を鷲掴んで無理矢理引き上げる。蹴り上げようとする足は踏みつける。
軒並み抵抗を封じられて歯軋りする十代に追い討ちをかけるように彼らは次の行動に移る。
「ああそうだ。これを忘れていたね。」
さも今思い出しましたと言わんばかりのわざとらしい口ぶりで、彼らの内の一人が十代からディスクを取り上げる。
左腕から消えた重みに十代の鼓動が一際大きく脈打つ。それは十代にとって武器であり盾であり絆であった。この上なく大切な仲間であった。
それをこんな奴らにいいようにされてたまるものか。怒りで視界が真っ赤に染まる。
「何しやがる…!返せ…っ、返せえええええぇえええ!!」」
感情の高ぶりにまかせて叫び、手を振り解こうとがむしゃらに暴れる。不意に右腕の拘束が外れる。その勢いのまま背後の一体を裏拳で殴り飛ばし、
眼前の一体の顔面に思い切り拳を叩き込む!めしゃりと拳が骨にめりこむ嫌な感触。黒いカードとなって散ったそいつには目もくれずに、
3体目の腹に蹴りを入れる。ディスクを持ってにやにやと下衆びた笑みを浮かべる彼らに、再び十代は吼えた。
「返せええええぇえっっ!その汚ねぇ手で!俺のデッキに触るんじゃねええぇえええぇえ!!」
4体目の顔面に再び拳をふるい、けれど次の5体目に殴りかかった所で背後から地面に叩きつけられた。
のしかかられて、息が苦しい。それでもまだディスクを取り返そうと抵抗する十代に、彼らは無言で十代の肩に手を置き…、
―――そしてやはり無言のまま、十代の肩の関節を、外した。

澄んだ夜空に声にならない悲鳴が響く。痛みにのたうちまわる十代に構わず、彼らはもう片方の関節も同様に外す。
痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたイタイイタイイタイいたい痛いいたいイタイイタイ痛い!脳内をその3文字だけが支配する。
蹴り飛ばされるようにして身体を反転させられる。涙が浮かんだ視界に月が映る。…とても、とても綺麗な月だった。
上体を起こされ、背後から抱きかかえられるようにして拘束される。足が無遠慮に割り開かれ、一体が身体を侵入させてくる。
両腕の感覚はとうに無い。焼けるような痛みが何によるものなのか、今の十代には分からない。
がちゃがちゃとベルトが外される音を、頭の片隅で聞いた。しかし身体は全く言う事を聞かず、やめろという言葉も言葉にならず虚空に消える。
一気に下着ごとズボンが取り払われる。自身を晒される屈辱に十代の顔が歪む。足を閉じようとにも、片足ずつをがちりと持たれていては叶わない。
「我々の主旨は君を気持ちよくさせてやることではないのでね。―――悪いが、」
「!!…や、め……や、やだ、あ、やっ、あ、あ、あ゛あ゛っぐあああぁあーー!!」
一切慣らされずに入れられた凶器に、十代は何もかもを忘れて叫んだ。プライドも使命も、何もかも。そうして叫ばなければ何かが壊れたから。
否もう壊れてしまったのか。ただただ十代は、言葉にならない叫びを吐き出し続けた。
しかし彼らは十代のそんな僅かな逃避すら許さなかった。一体が前髪を掴み、酸素を求めて開いた口に性器をねじり込む。
同時に背後の一体が十代の下顎を掴み無理矢理引き下げる。それによって異物を喉の奥まで迎え入れることになる。気持ち悪い、気持ち悪い!
吐き出そうとする十代の動きを押さえつけ、彼らは性器を動かし続ける。何度も、何度も、何度も十代の喉奥に凶器を叩きつける。
十代の口端から涎と先走りとが交じり合った液体が零れ落ちる。それは、肉棒を突き立てられた女性器から滲み出る愛液のようでもあった。
下と口とを同時に犯され、悲鳴を上げることも抵抗することも許されずに、十代はされるがままに揺さぶられ続けた。
引き裂かれた下肢の、筆舌に尽くしがたい痛み。見えないけれど、きっと血がでているのだろう。霞んでいく思考を、十代は歓迎した。
けれど彼らはそれすらも良しとしない。律動を早めて、十代の意識を無理矢理現実に引き戻す。
快楽を引き出すのではなく、中を乱暴に引っ掻き回して、肉を裂いて、滅茶苦茶にするだけの、拷問。そこに愛なぞありはしない。
十代の魂を貶める、それだけを主題に置いた蹂躙だった。

不意に口の中の異物か引き抜かれる。その瞬間に、顔面にどろりとした液体をぶちまけられた。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!もう、こんなのは嫌だ…!!
「何ならもう一度、覇王の力に取り込まれてみるかね?彼の力ならば、我々を消し去ることが出来るやもしれんぞ。ティーパーティの相手が君でも、
 彼でも。我々は別段構わないのだが。」
侮蔑を含んだその囁きに、十代の瞳が怒りの色を宿す。そんなことはできない。できるわけがない。
第三者から見れば、取り込まれていたように見えたかもしれない。けれど自分は、確かにあの時守られていたのだ。深い深い闇の底に、
厳重に仕舞い込まれるようにして、守られていた。世界の全てから、あの黄金が守ってくれていた。自分は全てかなぐり捨てて逃げたというのに。
それを。今は自分の中で静かに眠る彼を、こんな狂宴の只中に引きずり出すなど。…そんなこと、できるわけがなかった。
鋭く睨み付ける十代に、けれど彼らは満足そうに微笑んで。
「…なら、耐えてみたまえ、この陵辱に。君の心が壊れるのが先か、君が不思議の国から抜け出すのが先か。さぁてどちらが先だろうね?」
再び口にねじ込まれた異物と、再開された律動と。未だ止まない焼け付くような感覚と、外された肩の痛みと。
頑なに目を閉ざして、十代はそれら全てに耐えた。己を守るために。彼を守るために。

―――そんな十代を嘲笑うかのように、中に生暖かい液体が叩きつけられた。
白濁に塗れた性器を引き抜いた一体が、もう一体と場所を代わる。終わりではない。ほんの、始まりの始まりにすぎない。
冴え冴えとした冷たい月光の下。…陵辱は未だ、終わらない。



落ちてしまったアリスは。愛しい人の横で、温かな日の差す木の下で、目を覚ますことができるでしょうか。










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あとがき。

総統からの宿題第2弾。T十リンカーンだぜ。もはや発動された経緯も思い出せない(ボケかよ)
最近の一押しがT十です異端者ワーイwwwwwT十もっと増えないかなといたるところで呟いているが、やっぱり増えてくれない。
俺鳩語しゃべってんのかな。くるっくー。

そして1作目に比べ描写に戸惑いやためらいといった類のものがなくなっていくのが目に見えて分かる。
ニコでうみねこのBGM聴きながら書いてたら十代がT氏相手に無双始めてしまって軌道修正に苦労した。

(2008.02.10)





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