満開の花よりも、散って地に落ち踏み潰された花のほうが。
きらきら光る宝石よりも、欠けてしまったほうが。

自分はそういう趣向の持ち主だと気付いたのは、いつのことだっただろうか。
ともかく自分は完璧なものよりも、なにか一つでも傷があったほうが愛おしく感じる性質なのだ。
そして今目の前にいる獲物はこれ以上ないくらいに完璧で。
だからこそ、傷つけてあげなくちゃあと囁くのだ、己の中で己の姿をした誰かが!!



ぎらぎらと色の違う双眸で睨みつけられる。
土の付いた頬。嗚呼、これだ。そうだよ完璧なものなんてこの世にあっちゃいけないんだよそんなものすぐ傷ついちゃうんだから、
だったらせめてその前に僕の手で壊してあげなきゃあね!
「……っ、き、さま…!」
「…これは君の為なんだよ、十代。」
先程腕の関節を外したからだろうか、息をつめながら十代はそれでも視線での抵抗を止めない。
その強い眼差しにああ、まだ壊しきれてないんだねと思う。
そうだね、君は文句のつけようもないくらいに完璧だものね、これっくらいじゃあ傷ついてなんてくれないよね!
「十代、君の為なんだよ。君は綺麗だから、だから僕が傷つけてあげるの。いつか誰かに傷つけられる、その前にね。」
喉元を思い切り踏みつける。衝撃にオッドアイが見開かれる。つうと涎が十代の口の端を伝った。
ぐり、ぎりと踏みにじれば、苦しげな呼吸音。…ううん、まだ足りない。

頬を殴ってみた。
鳩尾を思い切り蹴ってみた。
傷口を抉ってみたり、首を絞めてみたりもしたんだけれど、それでもまだその宝玉の如き双眸が輝きを失うことはなく。
逆に一層輝きが増しているような気さえした。
鼻血と涎とでぐしゃぐしゃになった十代のお顔。けれどその瞳は乾ききっている。
一筋の涙も流さない様が彼が折れないことを示しているようで、心がざわめく。
「どうして傷ついてくれないのかなぁ。こんなに頑張ってるのに。」
「おまえ、みたいな、やつなんか、に…!まけてたまるかよ…!」
途切れ途切れだけれど、間髪入れずの口答え。
ああ、ああ!全く、強情だねえ!
傷を付けてあげたら、思いっきり優しくして、優しくして、優しくしてあげようと思ったのに!

十代の上に、馬乗りになる。
睨めつける彼の視線を真正面から受け止めて、それまで一度も使っていなかった小さなナイフをポケットから取り出した。
ひんやりと光る刃を視認して尚、十代の瞳は揺るがない。
どこまで耐えられるのかなぁ。なんだか楽しみになってきた。


爛々とした嗜虐心に舌なめずりをして、その白い肌にナイフを振り下ろした。





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あとがき。

最近茶会にお邪魔する度に即興文召喚させられてる気がするのは気のせいですか?否気のせいでも何でもない。
hうろさんのブームがヘルヨハ×二十代らしくて、乗っかってみた。
ほんとは…ど鬼畜EROに…なる、はず、だった…んだ…(遠い目)

(サイトアップ:2008.07.12)





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