金に銅を混ぜると赤くなり、金に銀を混ぜると白くなる。
ならお前に絶望を混ぜたら何色になる?
鏡が割れる音を聞くだけの毎日。
最初のうちは鏡に向かって、そこに映し出されている殺戮の限りに止めるように叫んだ。
光が霧散し、呼応して鏡も割れる。何枚も、何枚も、何枚も、何枚も。
それでも『彼』は止まらない。その歩みを、殺戮を止めない。
そして十代は遂に鏡に向かうことを止めた。
『彼』を…覇王を止める術を、十代は持たなかった。
「十代」
現れた覇王は、いつもと違い軽装だった。休む前なのかな、と十代はぼんやり思う。
膝を抱きかかえるようにしてうずくまる十代の前髪を乱暴に掴み、顔を引き上げる。
「良い表情だ。…大分理解したようだな。」
「……っ、う…、」
べろりと、頬を舐める。十代の頬に涙は流れていなかったが、涙を舐め取ろうとするかのようだった。
ざらついた舌の感触に、十代の背筋を悪寒が駆け抜ける。
身を捩ろうとするが、掴まれた前髪が痛いだけだった。
唐突に、覇王が十代の肩を掴み床に押し倒す。
強かに後頭部を打ち、視界が白く染まる。
…久しぶりに見る白だった。それが何故だか心地よく感じられて、十代は抗わず意識を手放そうとした。
しかしひやりとした感触を肌に感じて、思わず意識を浮上させる。
「っな、何してんだよ!」
見れば覇王が十代の黒いインナーの中に手を入れて、胸までたくし上げていた。
冷たい手。幽霊が触れたらこんな感じなのかなと十代は思う。生きた人間の手とは到底思えなかった。
困惑する十代に、顔を近づけて覇王が言う。
「言った筈だ十代、お前には俺だけいればいいのだと。だから全て、捨ててしまえと。」
ぎり、と覇王の爪が十代の肌に食い込む。痛い、と悲鳴を上げる十代をさらりと無視して覇王は続ける。
「だがまだお前は捨てきれていない。お前の中に、俺以外のものが、まだある。」
「捨ててしまえ、十代。」
鎖骨の辺りに噛み付くように口付けられて、十代の喉から引き攣った悲鳴が漏れる。
身体の下から抜け出そうとする十代の首を思い切り掴む。また、言葉にならない抵抗。
押しのけようとしてくる足を割り開く。…逃がしはしない。
首を絞めたまま、十代の呼吸を止めようとするかのように口付ける。無防備に開いていた口から、舌を入れてやる。
逃げ惑う舌を捕らえて絡めてやれば、鼻にかかったあまえたような声。喉が鳴る。捕食者としての本能が囁く。
これは自分だけのものだ。あいつらが否定して捨てたのだから、これは自分だけのものであるべきなのだ。
「っは、げほっ、げほっ!…はぁ、っ、やめろ!」
裏返る声。怯えきった瞳。紅潮した頬。愛しい愛しい己の半身。全部全部、自分のものだ。
脇腹にするりと手を滑らせながら、今度は胸の突起に口を寄せた。舐めて、歯で挟んで、舌でぐりと押し潰す。
その度に上がる制止の声。一挙手一投足に怯える十代に一層、嗜虐心が疼く。
「十代、」
「やだ、何するんだよぉっ…!やめろっ…!」
脇腹を辿っていた覇王の手がズボンにかかる。気付いた十代はさせまいとするが抵抗は失敗に終わる。
今までだってそうだった。何を言っても何をしても覇王には届かない。彼に抵抗する術を、自分は与えられていない。
涙で視界が歪む。けれどその涙すら、覇王の欲を煽るものでしかない。
未だ反応を見せない十代のものを覇王の手がそっとなぞる。びくりと大きく跳ねた十代に満足して、
本格的な愛撫が始まる。
「ん、っやだあ、っああ、う…あああ、っやだ、いやだ…!!」
「嘘をつくな十代。…くく、感じているんだろう?」
自分のものでないような高い声。心と裏腹に反応していく自身。視界には覇王の…己の顔。
五感の全てが十代の身体を、心を追い詰めていく。先端に爪を立てられて、十代は絶叫した。
「あああ、っや、あ、あああああーーーっ!!」
鼻につくにおい。腹に感じるべたついた液体の感触。
涙で滲む視界で覇王を見れば、手についた白いものを見せ付けるように舐め取っていた。
「随分と濃いな。…お前の大好きなヨハンは、こういうことはしてくれなかったか?」
返答は荒い息と射抜くような視線。その視線に、十代がまだ『彼』のことを捨てていないのだと確信する。
「ヨハンは死んだ。もうお前に話しかけることも、触れることもない。…二度と、な。」
「適当な、こと、言うなっ!…ヨハンは…!」
ヨハンの名を出した途端威勢がよくなった十代に気分を害したのか、覇王がまた十代の口を己のそれで塞ぐ。
舌を甘噛みして…それでも何事か喚く十代を無視して、後蕾に手を伸ばした。
「!?…っはぁ、なに、やめろよ、何すんだよ…!?」
未知の行為に十代の抵抗が激しくなる。ばたばたと暴れる十代。このままでは少し面倒だ。
「静かにしろ十代。慣らさずに入れられたいのか。」
けれど混乱の只中にある十代に覇王の言葉は届かない。駄々をこねる子供のように暴れて…
そうして振り抜いた拳が、覇王の頬に直撃した。拳に当たった感触に思わず動きを止める。
―――視線の先の覇王は、恐ろしいほど綺麗に、笑んでいた。
「やめ、いたい、っ、あぐっ、あああああああーーー!!」
侵入というような生易しいものではない。それは最早蹂躙だった。
ぎちぎちと締め付けてくる中に覇王は方頬を歪めながら、けれど確かに満たされていくのを感じる。
「全部入ったぞ、十代。」
「うあ、あ、あ、いたい、いたいいたいいたい…っ!や、抜いて、抜いて…!!」
痛々しい悲鳴に構わず覇王は「動くぞ、」と十代にとっては死刑宣告にも等しい一言。
そして間を置かずに、律動が開始された。
「ひあ、う、あああ、っぐ…!ひぃっ!やめ、ろ…やめて、くれ…!!」
焼きごてで身体の中をかき回されているような感覚。満足に働かない頭で、ああ、このまま自分は死ぬのだと思った。
中が、繋がっている部分が、担ぎ上げられた足が、心が―――全てが痛い。死ねたほうがどんなに楽か。
だが、その逃避の姿勢を感じたのか、覇王が言葉を紡ぐ。
「そうそう楽に逃避などさせるものか。…そら、十代。さっきのように感じてみろ。」
「んっ、あ、やめ、そこは…!」
覇王の手が再び十代自身に伸ばされる。痛みに萎えていたそこは、二度三度と扱かれれば確実に立ち上がっていく。
受け止めきれない痛みと快楽に号泣しながら、十代は喘ぐしかなかった。
泣き叫ぶ十代に、覇王は思う、壊れてしまえ…と。そうして全て、忘れてしまえばいい。
自分がいるのだから。自分が、守ってやるのだから。
「んあっ、っう、ああ、あ、も、やめ…!や、あ、…っ、あ、あああああーー!!」
「…っ!」
一際強く最奥を突かれて、十代は果てた。
気を失った十代の頬を、そっと撫ぜる。先程までの激しさなど微塵も感じられない…壊れ物でも扱うかのような仕草だった。
「…十代。」
この半身だけが、自分の全てだ。十代なくして、己は存在しない。
他の誰にも渡しはしない。その為には、十代を壊すことすら厭わない。十代をここに留め置くためなら何だってする。
―――そうだ、何度だって抱いてやろう…その金の瞳が、あの蒼を忘れるまで。
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あとがき。
そんなこんなで初ERO。そうt…鳴魅さまのとこの虐め隊絵茶に参加したときに宿題発動されました。
そういえばまだキスも書いたことないやとかうっかり発言してしまって、それが何故か気が付いたらERO書くことに。
キスは本館のが先でしたね。ディアボロスの…2部の最後あたりで書いた記憶が。
それが別館はいきなり飛び越してEROだよ。なんだこの差。
(サイトアップ/08.02.01)