偏愛10のお題
9つ目/何も隠さず全てを見せて
まるで汲んでも汲んでも尽きない井戸のよう。
覗いてみたら真っ暗闇で、落ちたらそれで、はいおしまい。
「ねぇ十代。僕は君を愛しているんだよ。君のことを全部知りたい。君の全てを僕のものにしたい。身体も心もね。
そうして同じように、僕の全てを君に捧げたいとも想っているんだよ?」
いつものようにありったけの想いをこめて囁くけれど、返ってくるのはいつものようにつれない言葉。
「分かった。百歩譲ってお前が俺のこと愛してるってのは認めてやってもいい。けど、駄目だ。…俺はお前を愛せない。」
射抜くように見つめてくるオッドアイ。底知れぬ闇を抱えた可憐な花。手折られることを知らぬ苛烈な花。
光を受けて、咲き誇る。大輪のオッドアイ。
「俺は、お前を愛さない。」
言霊にて紡がれる絶対の壁。受け入れない。受け入れない。受け入れない。拒絶の二文字を視線に込めて、貫く。
「…それは、触れられるのが怖いから?」
―――身体にも、心にも。
笑みを乗せてそう言えば、強さを増す瞳の光。核心を突かれまいとして、無意識に身構えたのだろうか。
けれどねぇ、駄目だよ。言っただろう、君の全てを知りたいんだって。全部、全部、暴かせて。
「そう。君は怖いんだろう?君の中にある暗闇が、また他人を傷つけてしまうんじゃないかって!」
「…黙れよ。」
「”傷つける”なんて表現じゃ生温いのかな?頭の天辺から爪先まで。骨の髄までばりぼり音をたてて噛み砕いてさ!
そいつの存在そのものまでもを喰らってしまうって、そう言ったほうがいいのかなぁ?ねぇ十代?」
「黙れッて言ってんだよ!」
火の粉が舞い散るかのような剣幕で叫ぶ。ああ、いい表情だ。
けれど今剥いだ仮面はまだまだその一部に過ぎない。時間をかけて、じっくり削ぎとってあげる。
それとも音をあげて自ら外すほうが先かな?僕はどっちだって構わないんだよ?
「そんな叫んじゃ、認めたようなもんだよ、十代。」
頬を両手で包み込む。ひやりとした肌が彼の闇に触れているようで、恐ろしくも心地良い。
普段は隠された耳に、注ぎ込むように囁く。跳ねた肩を押さえつけて、更に続ける。
「大丈夫。僕は受け入れてあげるから。君の丸ごとぜぇんぶ、愛してあげるから。だから…ねぇ?」
何も隠さず全てを見せて
(震える君の心の、奥の底の底まで!)
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あとがき。
某hうろさんに「はとさんはもっとヘルヨ二十を書くべき」とご指名頂いたのではりきって書いてみた が あっさり撃沈
ヘルヨ二十の独特の色気が微塵も無い…ううう…。
そしてやっぱり俺はヘルヨ書くのが苦手だ…ただの絶好調なヨハンだよ…。
BGMはうみねこえぴ4のエンドレスナイン。うみねこパロもまた書きたいなぁ。楽しかったんだよ。
(09.01.06)