偏愛10のお題

4つ目/夢見るほどに君を想う





霞む蒼を、追いかけて、追いかけて、追いかけて。
思い切り手を伸ばす。…けれど、それでも、…掴めない。



その覚醒は、ざぁ、と冷水を浴びせられる感覚に似ていた。
悲鳴を上げそうになって、何とか踏みとどまる。
息を整えながら、身体を起こす。ぱちりぱちりと薪が爆ぜる音だけが、世界に満ちる。
眠っている皆を起こさないように…そっと、そおっと。十代は、その場を抜け出した。


異世界に再び足を踏み入れて幾日か過ぎたけれど、ヨハンの行方は杳として知れない。
分かったのは、この世界がとんでもない世界だということだけ。
デュエルの勝敗がそのまま生死に繋がるなんて。なんて。なんて酷い。
日に日に濃くなる、再びの喪失の予感。背筋を駆け抜ける感覚に、自らをかき抱く。
ぎりぎりと、爪を立てて…けれど消えない。拭えぬ、黒い未来。

「ヨハン。…ヨハン、ヨハン…!…っ、ヨハン…!」
少し前なら、こうして呼べば、直ぐに応えてくれたのに。笑って、名前を呼んでくれたのに。
どうして。どうして。どうして自分はここにいるのに彼はここに居ないのだ。どうして。どうして!
どうして自分は今独りなんだ!

ヨハンの声が聞きたい。笑った顔が見たい。ここにいるよって、言って、ほしい。
そうでなければ決壊しそうなこの想いが、そう遠くない未来に、己すらも食い尽くしそうで。
そうなったらどうなるのか、十代自身にも分からない。だから…だから早く、早く帰ってきて。
「ヨハン…!」



夢見るほどにきみを想う
(壊れそうな、想いを抱えきれずに)





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あとがき。

久しぶりのお題更新。ヘルヨ二十、覇十ときたのでヨハ十です。ヨハ←十だけど。
そしていっつもヨハンばっかりじゃあれなので久しぶりに十代病ませてみた。
覇十だとよく十代病むんだがヨハ十だとうちのヨハンクオリティなせいであんまり病まないんだよね。
そんな意味では珍しいかしら。というかうちのサイトは受けが病むってあんまりないよね。攻めが強烈すぎるせいで。

(2009.05.02)





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