偏愛10のお題

2つ目/触れたい、抱きしめたい





けれど彼を癒す術を、俺は知らない。



彼を…十代を心の奥底に閉じ込めてから、もう幾日がたっただろうか。
相変わらず彼は自責の念に苦しんでいる。どうすればよかった。何が悪かった。
答えの無い問答を延々と続けている。
震える背中は、酷く頼りない。同じ身体の内に存在しながら、こうも違うのか。
否、違って当然なのだ。きっと自分達は、互いに無いものしか持ち得ない。…きっと、そういう存在なのだ。

「…十代。」
「…なにが、なにがわるかったっていうんだ、おれ、かったのに…!たたかって、たたかって、たたかって…!
 かった、のに…!…んで…なんで…!!」
こういう時に、歯車の狂う前の仲間達はどうしただろうか。やはり変わらず彼を責めたのだろうか。
彼らしくないと、失望したのだろうか。それとも…、それとも。
いくつかの可能性が頭を過ぎるが、どれもが己の取り得る道にはなり得ない。
こうやって、閉じ込めて、もがき苦しむ様を見守る、ことしか。


―――結局、何の解決にもなっていない。
分かっている。分かっている。…分かって、いる。
けど、鎧に包まれたこの手では、抱きしめてもかえって彼を傷つける。
冷たい鎧は、彼を暖めてもやれない。

自分は、彼を、傷つける。

それが分かっていても尚、希(こいねが)わずにはいられない。



触れたい、抱きしめたい
(そうして苦しむ彼を、救ってやりたいのに。)





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あとがき。

お題、今回は覇十でお送りしました。覇十っつーか覇→十?
基本ド鬼畜な覇王様スキーですが、こういう過保護覇王様も勿論大好きです。

しかし俺はあれだな。ひらがなしゃべりが好きだな。
オリジのディアボロスの幼少ユトちゃんから始まり、決定打が白痴十代だな。楽しいんだよ、書いてて。

(2009.02.08)





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