偏愛10のお題
10こ目/最後の時まで愛してあげる
君の心の、爪痕になりたい。
俺はきっと、お前を置いていってしまうから。
今のあいつは、果たして人間と、言えるのだろうか。見た目は、一応、人間だけれど。
その瞳が異形のオッドアイに輝くことを、人ならざる力を行使できることを、俺は知っている。
本人に聞いたって、「知るかよそんなん。多分違うんじゃね?」とでも返されるのがオチだ。
そう。きっと、十代自身ですらも、分からないのだろう。
そんな彼が今後どのような運命を辿るのか。そんなものは誰にも分かりはしない。
普通の人間だって、どうなるか分からないのに。ましてや、人間という枠をはみ出してしまった彼は?
もしかしたら、寿命すらもう無いのかもしれない。カードに宿る彼らがそうであるように。
そう考えて、ああ自分は彼を置いていかなくてはならないのか、とぼんやり思った。
自分がいなくなった後、彼はどうするのだろう。どうもしないかもしれない。
最近の彼は、周囲への感心が希薄だ。努めてそうあろうとしているのかどうか、は分からないけれど。
そんな彼だから、ずぅっと一人(この場合中の精霊もカウントして二人とすべきなのだろうか)で生きていくのだろうか。
それとも誰か他にも、大切な人を見つけるのだろうか。
―――そこまで考えて、我慢がならなくなった。
渡さない。渡さない。渡したくない。彼を愛するのも彼が愛するのも自分だけでいいのに!
「優しくしたほうがいい?それともこっ酷く抱かれたほうが、覚えててくれる?」
組み敷いた琥珀は、とても澄んだ色をしていた。硝子の切先にも似た視線に怯みそうになる己を叱咤する。
傷つけられては駄目。傷つけるのだから。手酷く傷つけて、彼の心に、消えない傷跡を。
その傷跡さえあれば、彼をずっと愛してやれる。記憶の中で、彼をずぅっと愛してやれる。
「…十代。」
最後の時まで愛してあげる
(君がこの世から居なくなる、その瞬間まで)
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あとがき。
そんなわけでラストはヨハ二十になりますた。
なんでヨハンが4期冒頭にいるんだとか突っ込んじゃ駄目だ。突っ込んだら負けだ(お前がな)
好き放題やらかしまくったお題ですが、最後までお付き合い頂きありがとうございました!
(2009.05.05)