貴方に願う10のお題

7つ目/心を偽らないで





どうか、その思いまで捨てようとしないで。

けれど届かない、私の願い。



遠くを見つめるその背に、今翼はない。
白と黒の、神々しい羽。
1年前には無かった―――彼が手に入れた力。…私が与えてしまった、力。
「…リュウナ?」
ふと、彼が振り返る。…ああ、彼の瞳はこんなにも凪いだものだっただろうか。
こう、ふとした瞬間に違いを見つけてしまって、どうしようもなく悲しくなる。

「マオさんとは、お会いにならないのですか?」
「………会わないよ。」
たっぷり沈黙して…けれど彼は穏やかな笑顔で否定した。
「エルウィンさんも、ブランネージュさんも、分かってくださったでしょう?だったらマオさんだって、」
「そうかもしれない。でも…それでも、僕はマオに会う気はないよ。」
確固たる意志をもって、彼は言う。
どうして、そうまでして捨てようとするの?あんなに大切にしていた想いだったのに。
「マオさんのこと。…今でも、お好きなのでしょう?」
「…今日は随分と、意地の悪い質問ばかりするんだね、リュウナ。」
眉を寄せて、困ったように笑う。…こういう時の笑い方は、変わらない。
けれど、あの屈託の無い笑いの方が彼女は好きなのだろうなとぼんやり思う。自分もあっちの笑みの方が素敵だと思う。
「あなたが、ひねくれているからですわ。……お好き、なのでしょう?」
表情を消して問えば、また苦笑。
彼が、俯く。長めの前髪が、彼の表情に影を落とす。
「その問いには…答えられない。でもね。」
一旦そこで言葉を区切り、彼はまた窓の外に視線を遣る。

彼が見ているのは何?窓の外の景色?それとも遠い、故郷の景色?
…彼が”見たい”ものは、本当に欲しいものは何?

「あの大戦の時…僕は一番辛くて、でも、一番幸せだったんだ。」
そんなもの、決まっているじゃない。そう、あんなに幸せそうだった。戦の中にあって、輝いてさえ見えた。
遠くを見やる彼の瞳が泣きそうに歪んだのは、錯覚だろうか。

「…皮肉だね。」




それが力の代償だというなら、なんて残酷な結末なのか。





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あとがき。

考えてみれば初書きリュウナ様。片思いの構図で出してあげられなかったしね。
それはそうと、シオン時代は「シオンさん」だったのに、覚醒後は「ゼロ」で呼び捨てなのは何故。
そういやマオさんも「シオンくん」→「ゼロ」で呼び捨て変化だよな。いや、あれは誤解があったからなのか?
まあゼロくんだとそれはそれで違和感大だがww

(2008.1.26)





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