貴方に願う10のお題

3つ目/もっと頼りにして





もっと、頼ってよ。

精一杯の、ぼくの願い。



(そんなに頼りなく見えるのかな。)
勇者亭の傍を流れる小川のほとりで、シオンは人知れず溜息を吐いた。
(初対面でずばり頼りないって言われちゃったもんなあ。確かにぼくは指輪がなければほとんどなんにも出来ないけど。)
(…でも、指輪があっても。)
(ぼくは、戦うことしかできない。)
シオンの口の端が自嘲気味に歪められる。そうだ、指輪があっても無くても己は何も出来ない。
今日だってそうだ。マオが敵陣に一人で特攻をかけるのを止められなかった。
彼女がそれほどまでに思いつめていたというのに、気遣い一つしてやれなかったのだ。
暗い水面にぼんやり映る己の顔は、とんでもなく情けない顔をしていた。


「……シオン…くん?」
突然の声に肩が思い切り跳ねる。ぎぎぎ、と錆びた音がしそうなくらいぎこちなく首を回せば、予想した通りの顔。
いつも元気に存在を主張する耳は申し訳なさそうにしょげていて、視線はうろうろと彷徨って。
「マオ……。」
「えと…その……今日は、その…。ゴメン、ね…。」
今日、何度聞いたかしれない彼女の謝罪。その度に、もういいのだと、気にしていないと返すのだけれど、再びの謝罪に、
それらの言葉は意味を持たないものであったと知る。…やっぱり、救えないのか。
「マオ、今日は、謝ってばっかりだね。」
「だって…皆にメイワク、かけて…。」
その言葉も今日何度目だろうか。仲間の誰一人として、マオの行動を迷惑などとは思っていない。
然るべき罰を与えられないことに、不安になって何度も何度も謝っているのだろうか。
…このままでは、きっとまた彼女は同じ事を繰り返す。存在しない罰に急かされるようにして、彼女は一人で戦おうとするだろう。

「…マオにとって、ぼくはさ。」
「え?」
「やっぱり初めて会った時のままで…頼りない?」
傷ついた仲間に救いの言葉一つ満足に言えない。指輪が無ければ戦力にもならない。
でも、それでも。そんな自分にも、守りたいものがある。…守りたい人がいる。
「抱え込まないでよ。…もっと、頼りにしてよ。お願いだから…。」
目の奥がツンとする感覚。ここで泣いたら本当に情けないだけの男だから、必死に涙腺を押さえる。
「ぼくが頼りないんだったら、エルウィンでもピオス先生でも団長でも。誰でもいいから、頼りにして。」
「シオン、くん…。」
情けない顔を見られたくなくて、目の前の彼女を抱きしめる。
自分より随分小さい身体。けれど自分は、誰かの…何かの力を借りなければ大切な仲間一人守ることすらできない。
強くなりたい。もっともっと、強くなりたい。一人でも、戦えるように。…彼女を、守れるように。


「…お願いだから。…もう、一人でいなくならないで。」





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あとがき。

シオンくんとマオさんは、お互いにお互いをずいぶん救ってると思うんですが、
そのことに2人して全く気付いてないといいなとか思うはとさんは病院へ行ったほうがいいと思う。
時間軸はゲーム本編サブイベ「迷い猫の狂詩曲」後です。
ラスト、シオンくんにマオさんを抱きしめさせるかで20分くらい詰まった。(悩みすぎ)

(2008.02.28)





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