貴方に願う10のお題
2つ目/嘘はつかないで
お願い、そんな嘘、つかないで。
心の奥底、私の願い。
「あの子はね、とても嘘つきなの。」
息子の名と同じ…紫苑の髪を持つ彼女は、ぽつりとそう言った。
「シオンくんが…ですか?アタシには…そうは思えないんですけど。」
「そうね。…本人が嘘を吐いてるって自覚、ないみたいだから。」
自嘲めいた笑みを浮かべながらそう語る彼女は、何故だかとても、幼く見えた。
今なら分かる。その言葉の意味が。
「…ありがと。…もう、大丈夫だから。」
…嘘だ。
だってまだ、彼の手の震えは止まっていない。(ほんとうに、微かなのだけれど。)
「もう、寝たほうがいいよ。…明日が、最後の戦いなんだから。」
その言葉は遠まわしに、自分のテリトリーから追い出そうとしているようにも感じられた。
彼はいつもそうだ。
こちらにはずかずか踏み込んでくる癖して、自分の領域には立ち入らせようとしない。
しかもそれを気付かせないように…やんわりと拒絶するのだ。
出会ってからずっと…記憶が戻っても、それは変わらない。
「嘘吐き。」
「…マオ?」
「怖いくせに。…っそんなバレバレな嘘、つかないでよッ!!」
どうしてこんなにむきになるのか、自分でも分からない。
けれどなぜか無性に、腹立たしかった。
何に怒ってるの?
本心を見せない彼に?
それとも、頼ってもらえない自分?
…うん、きっと、どっちも。
抱きしめる腕に力を込める。
ねえ、あれだけ指輪使ってるのに、まだ分からないの?
キミは一人じゃないんだ、って。
「怖いなら怖いって、ちゃんと言って。」
「…でも、」
「言ってくれないほうが、ずっと辛いよ。一人で抱え込むのって、すごく疲れるの。
…アタシも、そうだったから。」
裏切り者の自分を仲間だと言ってくれたあの瞬間、どんなに救われたか。
キミはきっと、分かってない。
「だから、甘えたっていいの。ちょぴっとでも分かち合うと、随分楽だよ?」
経験者のアドバイスは素直に受け取っとくもんだよ、と付け足してやると、
申し訳なさそうに、抱きしめ返してくれた。
「じゃあ……せっかく、だから。…ちょっとだけ。」
お願いだから、そんな嘘、つかないで。
ホントの事言ってくれたら、何だって受け止めてみせるから。
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あとがき。
はとさんは本当に最終決戦前の話が好きですね。
そんなお声が聞こえてきそうです。
だって、書いてて2人が一番不安になってくれるのがこことゼノヴィアママン救出直後だから…。
いつか、マオとゼノヴィアママンのお話を書きたい。
(07.07.22)