歪んだ愛情10のお題

7つ目/逃げても無駄





走っても無駄。隠れても無駄。
ボクはきっとキミを見つけてみせるから。



ちりっ、ちゃりっ。
鈴の音にも似たその音は、けれど鈴とは程遠い冷たさを孕んでいた。
石畳の冷たさと、音の持つ冷たさ。
二つの冷気が、途切れそうになるアルヴィスの意識をかろうじて繋ぎとめていた。


こつん。


突如遠くで響いた音に、アルヴィスはびくりと体が跳ねるのを自覚した。
冷たくて、暗くて…絶望的な、おと。
徐々に大きくなるその音が、『彼』の来訪を告げている。
「―――っつ!!」
痛む体を引きずって部屋の隅に身を寄せる。
その間にもこつり、と石畳を叩く音は段々と近づいてきて。
そして遂に、木の軋む嫌な音とともに、部屋…否、牢の扉は開かれた。
「…お早う、アルヴィス君。」
「っ、…ファントム…!」
必死に稼いだ筈の距離は2歩と少しで無かったものになった。
…分かっている、こんな少しの抵抗など、逃げたうちには入らない。
けれど、逃げずにはいられない。
「かわいそうに、こんなに震えて。…寒かったの?」
がたがたという音が聞こえてきそうなくらいに震えている彼。
頬を撫ぜると微かに息を呑む音が、聞こえた。
「昨夜はだいぶ冷えたからね。まあ、熱は出てないようだから…大丈夫かな。」
「…何の用だ、ファントム…!」
「つれないなあ。用事がなければ会いに来ちゃいけない?」
仮面の笑顔に、けれどすこぶる楽しそうな声音。
嫌な予感が、背筋を駆け抜ける。

「どうもまだアルヴィス君は、分かってないみたいだから。」
肉食獣が獲物を見つけて喜びに浸るとしたらこんな感じだろうか。
そう思わせる、獰猛な笑み。
「物理的な拘束なら何とでもなる。…でも君は本当の意味では逃れることは出来ないんだよ。」
頬から首筋へ。
首筋から胸元へ。
下へ辿っていくその手が、心臓の付近でひたりと止まった。
丁度…そう、炎を象ったタトゥが刻まれた…その上で。
「…今日、これから始まるウォーゲーム。…君に、出てもらおうかと思って。」
「ッ何を、ふざけたことを…!?」
頭の中で、がんがんとうるさいくらいに警鐘が鳴っている。
反響するようなそれが、酷く厭わしい。
「僕は…否君も、知ってる筈だ。…君が本気でギンタたちと戦う…そのための方法を、ね。」
「!!」
宛がわれた掌から伝わってくる魔力に、彼が為そうとしていることを知る。
彼の魔力に共鳴して、タトゥが存在を主張し始める。
「や、めろ……!っ、…やめて…くれ…!!」
上ずって聞こえる自分の声。
けれどそれさえも直ぐに、遠くなっていく。



「…また目が覚めた時。」

「自分の手で逃げる場所を壊してしまったことを知って、君はどんな顔をするのかな。」


「…君の帰って来る場所は、ぼくのところだけでいいんだよ。」


ね、アルヴィス君?





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あとがき。

エロは書けない筈なのですが、ファンアルだと何故か勢いで書いてしまいそうな気がして怖い。
そんなカンジの1本でした。

今回は「聴覚」を特に意識して書いてみました。
ファンアルはどうもシチュエーションが似通るので、文章的に少し変えてみようかと思って。
…うん、見事に撃沈してるけど。
(2007.04.30)





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