歪んだ愛情10のお題
2つ目/俺だけを見ろ
けじめを付ける。…そんなのはただの、建前だ。
古代兵器の甲板の上。
銀と茶の髪を、風がもてあそぶ。
無言のままに自分は細身の刀を、彼は幅広の大剣をそれぞれ構える。
そして、彼…シオンの後ろに佇むエルフがおもむろに、指輪をはめた瞬間、それは起こった。
痛いほどの沈黙と、殺意に満ち溢れた場に突如として、光が満ちる。
しかし光と反するように、硫化したように黒変する彼の髪。
開かれた瞳は血に飢えるピジョンブラッド。
にたり、と笑う。獲物を狩る者の、笑み。
彼の顔立ちには不釣合いな、酷く凶悪な笑み。
けれどそれはまぎれもなく、自分が待ち望んだものだった。
キィン、と金属同士がぶつかり合う高い音。
素早い突きをなんとか受け流す。
打ち合う度に流れ込んでくる殺意が心地よい。
今彼は、本気で自分を殺そうとしている。
自分もまた彼を、本気で殺そうとしている。
国のためにけじめを付けたい、など…そんなのはただの、建前だ。
本当は彼とこうして戦っていたい―――殺しあっていたい。
稲妻を帯びた横薙ぎの斬撃を後方に飛ぶことでかわす。
着地の瞬間、そうこなくっちゃ、とでも言いたげな紅い瞳とかち合う。
(そうだ、それでいい。)
自然と自分の顔にも笑みが浮かぶのを感じる。
(俺だけを見ろ、シオン!)
プラウザバックで戻ってください。
あとがき。
某エルフさんが蚊帳の外。(ごめんなさい)
お、おかしいな…構想段階では攻撃受けてシオンさんに「下がってろ!」って叱られてるエルフさんがいた筈なのに…!
ど、どうしていなくなっちゃったんだ…?ミステリー。
殺し愛(not変換ミス)ということで…うーん、種で書いた「殺していい?」と被っちゃったかな…。
因みに時系列はゲーム本編「勇者に捧げる鎮魂歌」のカイネル戦です。
(2007.02.20)