歪んだ愛情10のお題
1つ目/声が枯れるまで
救いを求める声に返されるのは、彼の微笑みだけ。
(あれから何日経ったんだろう。)
壁も床も天井も、一寸の隙もなく真白に塗りつぶされた部屋。
もちろん窓なぞ、あるはずもない。
外界から…否、外気から遮断された気さえする。
けれど、この世界に一人だけ、という錯覚だけは起きない。
それは定期的にやってくる、「彼」のせい。
扉の外から微かに聞こえる、電子音。
その音に、ベッドに気だるげに投げ出されていた指が、ひくりと反応する。
空気が抜けるような音のあとに、足音。
「ただいま、キラ。いい子にしてた?」
虚ろな紫の瞳が、「彼」を捉え、その名を発する。
「…アスラン、」
己を閉じ込め縛り付ける、その人の名を。
「大分弱ってきたかな。この前持ってきた食事も、食べなかったものね。」
「アスラン、」
「困ったな、今は何も持ってきてないんだ。色々忙しかったんだよ。」
「ねぇ、アスラン、」
「また今度、持ってきてあげる。・・・それまで我慢できる?」
「…っ、アスランッ!!」
たまらず、叫ぶ。
どうして…どうして、こんなことに。
「ここから出して…アスラン…!」
伸ばした指先には、綺麗なベリル。けれどその色に、かつての優しさはない。
潜むのはただ、愛情の皮を被った狂気。
「何が食べたい?…言っておくけど、お菓子は駄目だからね。」
手首を掴み取られ、彼の頬へと導かれる。
感じる、ほの温かい体温。確かに彼はそこにいるのに、こんなにも遠い。
泣くまいと決めていたのに、頬を涙が伝うのを止められない。
「……れか…っ」
「キラ?」
「だ、れか…誰か…っ、助けて…!!」
泣き出したぼくに、微笑んだ気配。
「いいよ。声が枯れるまでそうやって、助けを求め続ければいい。」
愛おしいはずのそのテノールは、けれど絶望のみを告げる。
「待っててあげるから。助けなんか無いって思い知るその時を。」
(そうしたらお前は、俺に堕ちてきてくれるだろうから。)
啄ばむような…けれど全て奪い去るような、キスが一つ。
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あとがき。
なんかまたすごいのがでけた。
ザラキラ好きーならば誰もが夢見る(!?)監禁ネタでした。…ごめんなさい、凄く楽しかったですv(いっぺん死んどけお前)
時系列とかは特に考えてないのですが…18歳キラ様が泣いて助けを請う様が想像できないので、多分無印時代かな…(多分て)
18歳キラ様は色っぽいんですが、泣かないのがね…。
いや、キラ様ならなんでもおいしくいただけますが(問題発言)、やはり中でも泣いてるキラ様は別格なのです。
16歳キラ様の上目遣いとか、涙で潤んだ目とかは重要無形文化財に指定するべきです。(本気)(救えない)
(2007.03.05)