その金色は。
…間違いなく6年もの間、自分が求め続けていたものだった。




「…、え、」
彼が発した言葉に何と返していいのか。思考が二瞬も三瞬も止まる。
父と同じ髪の色に、彼が自分に父を重ねて見ているのだろうという簡単な結論に至るまで、
自分でも呆れる程に長い時間を要した。
「…ああ、そうか、夢か…。」
虚ろな瞳で呟かれた言葉には、様々な感情が煮詰められていた。
落胆。諦観。自虐。それから、憧憬。ほんの一瞬だけ。ちょっぴりだけ、安堵も。
「夢じゃない。」
出来るだけ落ち着いた声音で。彼に事実を伝える。…確かに目の前にいるのは、ダンナではないけれど。
血も志も確かに受け継いだ自分が今ここにいることを、伝えようとする。
「あなたは、いつもそう言う。」
少し眉を寄せて。はにかむように。微笑むように。…困ったように、笑う。
「そうして目を覚まして。…そこはいつも、檻の中だ。」
そして、もうこれ以上夢を見たくないと言わんばかりに目を閉じようとする。
ギンタは直感的に、これが最後のチャンスだと思っていた。彼を”人間として”こちら側へ連れ戻す為の。
だから叩く。今ここにいるのは求めている人ではないけれど、でもこれは夢ではないのだと伝えるために。
綺麗な彼の顔を叩くのはちょっと申し訳ない気もしたけれど、思い切り。…彼の頬を、ひっ叩いた。
「いつまでも、寝惚けてんじゃねぇぇえええぇええ!」
ばっちーん、と。皆がちょっと目を背けたくなるような。とても、とても痛そうな音が、辺りに響く。
…そうして、見上げてくるサファイアは。
「………、誰、だ…?」
困惑の色が強いけれど、確かにはっきりとした意思を宿していた。
「俺はギンタ。お前を助けにきたんだ!」
「そ、そんなことを頼んだ覚えはない!」
「せやなぁ。殺してくれ、っちゅう頼みやったなぁ。」
そこまで事態を見守っていたナナシが、口を挟む。…あの時の、約束。否、一方的なものだから約束とは違う。
そう、願い事。小鳥さんの、ささやかな、願い事。
「…けど、殺さへんで。ワイもギンタも、他の皆も。皆、助けてやりたいと思うとる。」
「……勝手、だな。」
「せやな。せやかて、君も勝手やと思うで。初対面で”殺してくれ”なんて。」
歯を見せながら笑うと、彼は逆に俯いて。そうだな、と静かに呟いた。
「もしワイらが殺すんやとしたら。」
「―――それはお前だ。…ファントム。」
ギンタがナナシの言葉を引き継ぐ。それまでやけにおとなしく事態を静観していたファントムは。
…いつものように、上辺だけの静かな笑みを貼り付けていた。
「…ふぅん?助けられるの?キミ達に?…本当に?」
問いかけの形をとっているもののそれは、お前達には無理だという挑発だった。助けるさ、とギンタが返しても、
その笑みは揺らがない。絶対の、自信。
「…分かった。いいよ。何とかして御覧よ。もう、ウォーゲームが終わるまでもつかってところまできてるんだ。
 気の済むまで遊んでくればいいよ。」
その言葉の意味するところはつまり、彼の身柄を受け渡すということ。彼らしからぬ随分とあっさりした態度に、
不審なものを感じないでもない。…けれど、最初で、けれど最後の、絶好のチャンス。



―――助けて、みせる。





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あとがき。

今回はギンアル配分多めでお届けしました。
ナナシとギンタ。書きやすさでいったら断然ギンタ。(だって前者は…くっ 大 阪 弁 ギリッ)
さて こっからちょっとメルサイドでお届けしますよ〜。次はアルベルとか駄目ですか。そうですか。

(2009.08.25)





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