「久しぶりに、お散歩しようか。」
気まぐれな悪魔の微笑みは、無情に死刑を告げる鐘の音にも似て。
殺戮を繰り広げる彼を、ファントムは満足そうに眺めていた。
手にしたロッドが舞う度に、合わせて地面が血に濡れる。
蒼い彼が、段々と紅く染まってゆく。
髪に、頬に、腕に、足に。まだ温かみを持つであろう鮮血が、降り注ぐ。
まるで花嫁を祝福する花弁のように。
燦々と、真紅の花が、降り注ぐ。
天を突く黒煙に、ドロシーだけでなく皆が押し黙る。
「自分の故郷まで焼き払おうっていうの、ディアナ…!」
呆然と落とされたドロシーの呟きに、ギンタは低く、搾り出した。
「行こう、皆。まだ間に合う筈だ。…こんなこと、絶対、許しちゃいけない。」
ふと感じる魔力に、そちらを見遣ると。
「おや。ギンタに…メルの皆もお揃いのようだね。キミ達もカルデアに来ていたの?」
「ファントム!」
思いもしなかった邂逅に、知らず頬が緩む。
大分美味しそうにはなってきたけど、でもまだまだ。ナイフを突き立てるのは、まだ先。
でも、もっともっと美味しくなるように。すこぉしばかり、遊んであげようじゃあないか。
「…アルヴィス君。」
名を呼び、くい、と顎で獲物を指し示す。彼もまた無言で、地を駆ける。
初撃を受けたのは、たまたま一番前にいたドロシーだった。
ゼピュロスブルームの柄で辛うじて受けたものの、鍔迫り合いでは女のドロシーが不利。
すかさずギンタが横合いから、ダガーでフォローに入る。彼の斬撃を避け後方に飛んだ彼を、スノウが狙う。
「アイスドアース!」
襲い来る氷塊。彼は表情一つ変えずにロッドを消し…次の瞬間、轟音を立てて地面から巨像が立ち昇る!
地面から出現させた巨像に阻まれ、スノウの攻撃は届かない。
す、と彼の手が静かに振り下ろされる。それを合図に同じような巨像が何本も、何本も彼らに襲い掛かる!
「散れッ!」
アランの声に、皆一斉に駆け出す。次々と立ち昇る巨像の襲撃を掻い潜ったギンタとナナシが彼目掛け飛び掛る。
「目ぇ覚まさんか、コラッ!」
ナナシがいつかと同じように、槍を振り下ろす。少々荒っぽい気がしないでもなかったが…仕方無いだろう。
上方からの攻撃を、右手にあった盾のARMで受ける。金属同士がぶつかり合う、甲高い音が響く。
その隙を突いて、ギンタが懐に潜り込む。
「アルヴィス!」
流石に動揺の滲んだ蒼の瞳。綺麗な、綺麗な蒼を真正面から見据えて―――、
そうしてギンタは、彼の頬を思い切り、平手で、張り倒した。
勢いを殺しきれずに、衝撃で倒れこんだ彼の上にのしかかるような体勢になって。
一瞬後に、呆然と此方を見上げてくるサファイアと、目が合った。
「………ダンナ、さん……?」
彼はとても…とても幼い声で、そう呟いた。
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あとがき。
えーと…その…なんだ。ほら。定期的に萌えが来てるもんで、てっきり書いてる気になってたんだけど。
前回小鳥さんの更新07年11月て。お前。詫びろ!死んで詫びろ!
燦々(さんさん)、という字。本当は違う字を使いたかったけどPCで出てこなかってん…。
俺の国語時点には載ってるのに…なんでだ…。
(2009.05.17)