たすけてどうしてたすけてくれないのなにもせおわぬきさまになどそんなくちさきだけのことばきみにはそんなものなにも
あなたにうらぎられるなんてかたきなんかうってもらったってじぶんでかんがえろきさまのおうこくにはさいしょからだれも
たたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえたたかえ、

こえ、こえ、こえ、

だれかが、…だれかが、おおぜいの、こえ、が。
けれど、やがてそのこえが一つになる。
おおぜいのこえが消えて、代わりに自分を呼ぶこえ。

あ、あ。よんで、る。
いかなくちゃ。かれが、よんでる。




「十代、」
自分の声が、自分を呼んでいる。
―――不思議な気分だな。
夢見心地にそう思って…十代はその瞳を開く。
「……。…覇王…?」
なんだか頭の後ろがごつごつする。……甲冑で膝枕は痛いよ、覇王。
無表情で(でも多分、心配してくれてるんだと思う)覗き込んでくる、同じ顔。
「魘されていた。…悪い夢でも見たか。」
「どうして?覇王が守ってくれてるのに、悪い夢なんて見る筈ないよ。」
そう答えると、小さい子供にするように頭を撫でられた。
…なんだか、複雑な顔してる。

姿見の自分に、そっと手を伸ばして触れる。
冷たい頬。まるで、鏡に触れているようだった。
「なあ、俺って酷いやつだよな。」
「…何故、そう思う。」
「だってさ、覇王にばっかり辛い事、押し付けて…自分はこんなとこで、守ってもらってて…。」
「十代。」
頬に添えた手に、覇王の手が重なる。甲冑の冷たさが、何故だか酷く心地よい。
「俺はお前の盾だ。…お前は俺から、存在意義を奪う気か。」
「違っ、そんなつもりで言ったんじゃ…!」
慌ててそう返すと、金色の瞳が少しだけ、細められる。
相変わらず無表情のままだけど、きっとわらっているんだろう。
「ならとやかく言うな。」
ぴしゃり。そんな音がぴったりの声でそう言って、覇王はそれきり黙ってしまった。
仕方がないからもう一度寝てみようと思う。
…今度は、覇王と一緒の夢がいいな。




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あとがき。

どうも前2作で覇王様が暴走気味だったので軌道修正しようとしたらこんな事態に。
覇王様が自重しても十代が暴走しては意味がありません。
そしてサイトに移すにあたり、短かったので冒頭に少し加筆したら痛さが3割増しに。

ブログ掲載:11/25
サイト掲載:12/8(冒頭文加筆)






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