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1.ファンアル/いつもどおりのお話
たった一つきりの、願い事。
僕は君に、愛されたいだけなんだよ。
「それってとっても、簡単なことだろう?」
首枷に繋がれた鎖を、ぐいと引っ張る。微かな呻き声をあげて、彼は己の足元へと頽(くずお)れた。
「ねぇアルヴィス君。僕を愛してよ。」
「…、っは、お断り、だ。」
苦しそうな吐息に乗せて紡がれる言葉は拒絶。こちらを見上げてくるサファイアには微塵の揺らぎも感じない。
受け入れてしまえば楽になれるというのに、全く強情っ張り!そこが可愛いのだけれど!
…でも、その虚勢ももう少しだ。あと少し。ほんの少しの時間で、彼は『永遠』を手にする。手にせざるをえなくなる。
「時間は、これから嫌ってほどあるからね。ゆっくり教えてあげる。『愛してます』って、言わせてみせるよ。」
「それだけは、ありえない。」
嫌悪を露に、鋭く輝く瞳。この二つの宝玉が己への愛情のみに染まるところを、早く見てみたい。
ああでも、焦ることはない。そう、たとえギンタでも、もうこの状況をひっくり返すことなど、出来るものか。
今度は。今度こそ、僕の勝ち、だ。
「唯一の希望も僕の手の中。自我をまともに保つことだって難しいこの状況で。…君はまだ、僕に抗おうっていうんだね。」
無言のままに、きつく、きつく睨みつけてくる。
少し尖った唇が可愛らしくて、そっと顎を掬う。ふっくらしたそれに、優しく触れるだけの口付けを。
子供が駄々をこねるように、首を振っての拒絶は首枷を引いて押さえ込む。
「…ねぇアルヴィス君。…僕を、愛して。」
はとさんはほんとに首輪が大好きらしい
2.アルベル/クラヴィーア編辺り
それでも、彼から離れることだけはできないのだ。
眠るアルヴィスを見つめながら、ベルはほうと溜息を吐いた。頬まで伸びたタトゥが、否応無く目に入ったからだ。
もう自分のものではないと言われているようで、酷く心を掻き乱される。
そんなの嫌。誰かに渡してなるものか。
この6年、彼のことを見てきたのは自分。彼の傍にいたのも自分。そして勿論これからも、そうである筈なのだ。
なのに。なのに。…あんな奴に、アルヴィスを持っていかれてなるものか。
けれどそんな思いとは裏腹に、己の手は酷く小さくて頼りない。
ひとたび戦闘となれば、戦う術だって持たない。それでどうやって、彼を守るって?繋ぎとめておくって?
こんな時に思う。…自分がアルヴィスと同じ、人間だったなら。ARMを使って戦える、人間だったなら。
そうしたら、ずうっとずうっと、彼の傍にいられるだろうか。守って、守られて、そうやって生きていけるのだろうか。
…そこまで考えて、虚しくなった。どうひっくり返したって、自分が人間になれる筈、ないのだから。
「…アル。」
眠る彼を起こさないように、そっと、そぉっと、呟く。自分に出来るのは、これぐらいだから。
「……アル。…アル…!」
2度、3度と呼ぶたびに、涙に滲む声色が情けなくて、悔しくて。
でも泣いたらきっと彼は悲しむから、歯を食いしばって耐える。ぎりぎりと音を立てても、けれどこみ上げる涙は止まらない。
「行かないで…お願いだから、っ、う…!何処にも、行かないで…!」
神様、いるのならこの人を連れて行かないで。
異種族間って萌えだよねという話