ようこそ星合荘へ〜204号室・右代宮戦人編〜
疲れた。まだダンボールがそこかしこに散らかっているがもう疲れた。
別段誰かと一緒に住んでいる訳でもなし。明日でも構わないだろうと戦人は結論付け、畳の上に身体を投げ出す。
やっぱり日本人は畳だ。畳と炬燵に限る。うんうんと一人悦に入っていたところに、困ったような声が掛けられた。
「お前なぁ。早いとこ片付けろよ。これから色々送り込む予定なンだからな。」
一人だった筈の室内に佇む男。戦人を姿見に映したような容姿のその男は、夕日に溶け込むが如く半透明に透けていた。
否。戦人が彼に似ているのだ。戦人を”造り出した”のは、彼なのだから。
和室に不釣合いなことこの上ない黒のローブ。衣服に刻まれた片翼の鷲。…千年を生きた、無限の魔女。それが、彼だ。
「そう言うならロノウェでも貸してくれよ。」
「てめーはベアトを餓死させる気か。」
「あの魔女サマが餓死なんてするタマかよ。」
違いねぇ、と独特な、けれど自分とそっくりな笑い声。
魔女を殺せるのは退屈だけ。しかしどんな強大な力を持つ魔女であろうとも、それの前には等しく無力だ。だから彼等は遊ぶ。遊び続ける。
そうしてこの魔女が始めた遊びが、これ。振り回される駒の身にもなって欲しいが、まぁ血みどろの惨劇でないだけ良しとしようか。
「中々強烈な奴らが揃ってるだろ?」
「まぁな。しかしよぅ、201号室のねーちゃんと203号室の兄貴のほう。ありゃやべーだろ。確実に死線越えてきてる目ぇしてるぞ。」
顎に手を当てて逡巡し、やがて思い至ったのか。あぁ、と苦笑した。あれはある意味、違うカケラの俺の姿だと。意味深に、嗤った。
「この盤はあのゲームみてぇにフェアな条件下に無い。幻想に満ちた、早い話が何でもアリ、だ。」
「何でもアリ、ねぇ。あのゲームが可愛く思えてくるぜ。」
「はッ。血みどろ抜いてやっただけでも感謝しろよ。」
少しずつ夜が侵食していく空を背景に、魔女が笑う。黒のローブを靡かせて、魔女が笑う。
口の端から覗く八重歯が、まるで牙のようだ。楽しみを貪欲に喰らい尽くす為の、牙。
「俺を楽しませろよ、右代宮戦人。俺を殺さないでくれ。」
脳内キャラ設定204号室編
右代宮戦人(18)
縁起の悪い数字と不吉な噂が絶えないせいで長い間空室だった204号室にあえて引っ越してきたツワモノ。
名前にコンプレックスを持っていたが201号室の3姉弟に出会い瓦解。俺まだいいほうだった!
たまに虚空に向って会話していることから彼も見える人なんじゃないかと囁かれている。
バトラ(?)
千年を生きた無限の魔女。遊びたいけどあのゲームみたいに人様巻き込むのはなぁ…と悩んでいたところ、
じゃあ自分で遊べばいいじゃない!という、よく分からない結論に至り、自分の駒を星合荘に島流しにした鬼畜ゲームマスター。
201号室のユダさん曰く、「テレビみたいなもん。チャンネル合わないと見れない。合わせられるかはまた別問題だけどな。」