暗い暗い、嵐の夜に。





ベッドに寝転がる。電気を付けていない客室は飲み込まれそうな暗闇で本能的な恐怖を感じないでもなかった。
静かな月夜だったならもう少し明るかったのだろうが生憎と外は嵐。
時折差し込む稲光も結局は部屋を白く塗りつぶしてしまうので視界はほとんどゼロに近かった。
眠るには煩さすぎる夜だが、こればかりは奴にもどうにもできないと戦人は溜息を吐く。
再び強烈な光が部屋を染める。しかしそれを遮るように影が落ちた。
「…よう。」
一瞬のうちに暗闇に戻った室内で、”彼”だけがはっきりと見えた。
”彼”はここに”い”るけれど、本当の意味でここには”い”ない。ずれた世界の住人だから。
豪奢なマントを羽織ったその影は、戦人と同じ顔をしていた。

「勝てそうなのか?」
「………。」
あの雛には「勝つつもりでいる」と答えたにも関わらず、再びの沈黙。
戦人に背を向けるようにしてベッドに腰掛けた”彼”は、バトラは何も語らない。
それでも戦人は、それだけで全てを悟る。
「…それでお前は本当にアイツが戻ってくるって。…本気でそう思ってんのか。」
遠くを見ていたバトラが、少しだけ視線を下げる。頷いたようにも、俯いたようにも見えた。
「お前は奇跡の魔女じゃない。お前に奇跡は微笑まない。本当に分かってんのかよ。」
「…黙れ。」
漸くの末に発した短い言葉は常人を震えあがらせるには充分な凄みを持っていた。
それだけ”彼”が感情を逆撫でされるということは、”彼”にも分かっているということ。
これからバトラが打とうとしている一手がどれだけ危険な一手であるか、分かっているということ。
「分かってるならなんでこんな危険な賭けをするかね。死者は起こすな。眠らせろ。そう言ったのは他でもねぇてめー自身だろうが。」
「………それでも、会いてぇんだよ。…あいつに、…会いてぇ。会って………謝りてぇんだよ。」
喉を掻き毟るような。静かで、けれど悲痛な絶叫だった。
今の”彼”には、それが全て。その他がどうなろうと構わない。そしてその、「その他」には自分をすら含めているという投げ捨てぶりだ。
自虐は別段止めはしないが道連れにされるのは勘弁してほしい。とはいえ駒が何を言ったところで覆りはしないだろうが。
「奇跡が起こって。アイツが戻ってきたと仮定して。…その時お前は、アイツの前に、いるのかよ?」
「………黙れ………ッ!!」
両の腕で己を抱いてバトラが叫んだ。再びの雷光が魔女の顔を照らす。何とも情けない横顔であった。

「分かったよ。もういい。………さっさと”殺せ”よ。」
変わらず天井を見上げながら戦人が呟く。その言葉にバトラが緩慢な動きで戦人の首に手をかける。
二人が二人とも同じ顔を見据えて。片方は嘲笑で。片方は泣き顔で。
「じゃあな、情けない魔女サマ。」

涙がぽとりと、死体の顔に落ちて弾け、消えた。



自分殺しの魔女が泣く





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あとがき。

お待たせしました。正義さまリクエストのヤンデルバトバトをお届けです。若干病み具合が足り…なかった…ような………ふぉおすいません
バトバトといったらもうEP6の自分殺しですよね滾る
正義さまお待たせして申し訳ありませんでした!よろしければお納めくださいませー!

(2011.05.03)





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