ねぇ、気に入っているのよ。本当よ。
気まぐれな猫の、次くらいには。
かろん、と空になったポップコーンの容器が投げ捨てられる。バトラはうんざりした目で転がっていく容器を見送った。
いや片付けるのは執事だけれども。自分の部屋が汚されていく様は見ていてあまり気持ちのいいものではない。
帰れと声を大にして叫びたいが目の前の人物にそんなことを言おうものならどうなるか分かったものじゃない。
内心戦々恐々しつつも、バトラはポップコーンを貪り続けるラムダデルタを見ているしかできなかった。
「ちょっとっっ!!聞いてんの!?」
勢い良くポップコーンの容器が机に叩き付けられる。ポップコーンがタンポポの綿毛のように宙を舞い、そしてやはり床に散らばった。
まるで絡み酒だ。喉まで出掛かったその言葉をなんとか飲み込む。
「あー………うん、まぁ…。」
「何よその!煮え切らない!返事は!!これだからアンタは無能なのよ!!」
だん、だん、と耳が痛くなるような音で、何度も何度もポップコーンの容器を叩き付けるラムダデルタ。
まるで絡み酒だ。喉まで出掛かったその言葉を以下略。
残り少なくなった中身をざっ、と一気に口の中へ流し込む。怒りが迸るような動作であった。
「それで最後にしろよ。太るぞ。ぶくぶくのあんたなんかベルンカステルだって見たかねぇだろ。」
バトラの言葉に、ラムダデルタの目にはみるみる涙が溜まる。泣きたいのか怒りたいのかよく分からない表情で彼女は再び絶叫した。
「ベルンはもうアタシのことなんかどうでもよくなっちゃったのよ!」
あんな魔女なんかとアタシの知らない内に二人きりでゲームはじめあwせdrftgyふじこ、もう後半は何と言っているのか聞き取れない。
ますますに取り乱すラムダデルタに、バトラも言葉を失う。どうしろと。
「浮気されたってことなんだろ。だったらあんたも適当に遊んで気を引けばいいんじゃねぇの?」
半ばヤケになって呟いた言葉に、けれどラムダデルタはぴたりと一切の動きを止めた。それはもう不気味なほどに。
「つまりアンタがアタシの浮気に付き合ってくれるってことね。」
「どうしてそうなった。」
彼女らしからぬ、至極真面目な表情。普段の賑やかさからの落差も相俟って、その表情は凄まじく恐ろしいものであった。
「流れ的にそういうことなんじゃないの?」
「ざけんな。俺がベアトに殺される。」
これ以上ないほどに呪う。かつてないほどに呪う。己の軽口を。自覚して何故直せないのか。
冷や汗が米神を伝っていくのを感じる。まずい何とかしないと。焦るバトラをよそに、ラムダデルタがゆっくりと席を立つ。
「ねぇ。アタシ、アンタのこと気に入ってるのよ。ベルンの次くらいには。」
「大ラムダデルタ卿にそう言ってもらえて光栄だぜ。だがあんたの相手はやっぱりベルンカステルでなきゃ無理だぜ。」
「………本当に?」
温度の無いラムダデルタの問いかけに、無言で頷く。何か口を滑らせてこれ以上事態を悪化させたくない。
痛いほどの沈黙が短くない時間続き、そして不意にラムダデルタが動いた。
頬を掠めた、温かい感触。
「!?へ、え、…あ?」
「…そろそろ、帰るわ。気まぐれな猫でも、これぐらいしとけば妬いてくれるハズだから。」
騒ぐだけ騒いで姿を消した迷惑極まりない客人に、バトラはただ叫ぶしか出来なかった。
ふざけるな!!!
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あとがき。
Q.あんまり励ましてなくない?
A.うん。
すいません精進します……。ラムダちゃんが好きなのに口調が未だに掴めてないという盛大なロジックエラー
はとさんもうそこから出てこなくていいよ
(2011.03.19)