まるで角砂糖の上に立たされているよう。
彼にとって居場所とは、そういうもの。





だから時間の経過とともに彼の居場所は容赦なく崩れ落ちていく。身動ぎなぞしようものなら尚更だ。
おとなしく僕が迎えに行くのを待っていてくれればいいのに、頑固な彼はそれが出来ない。
全く、手のかかる。…否、けれど自分は彼のそんなところすら、愛おしいと思うのだ。


「けれど今回ばかりはおいたが過ぎたね、アルヴィス君。」
腕を拘束する手に力を込めると、ぎしりと骨の軋む音。苦悶の声が食いしばった歯の隙間から微かに漏れた。
「痛いかい?けど君が悪いんだよ。君がそんなに隙だらけだからいけない。」
耳に直接吹き込むようにして言うと、一層ひどくもがいたが、背中から圧し掛かられて拘束されていてはその抵抗も虚しいだけだ。
息をするのもままならないのだろう。酷く苦しそうだが拘束を緩めるつもりはない。彼の自業自得だ。

捕まりたくないのなら、彼は忘れてはならなかった。隙を見せてはならなかった。
ずっと自分のことを憎み、それを糧として生きなければならなかった。
此方に背を向けるなど、賢い彼らしからぬミスだ。
「ヤツは何て言ってきみに近づいてきたんだい?どうして騙されちゃったの?」
「…っ、騙されて、…なんか…ッ、」
反論を聞きたくなくて、背中に乗せた膝に力を込める。苦しげな呻き声。
それでも背中越しに見える彼の横顔は不意に触れれば噛み殺されてしまいそうなほどの殺意に満ちていた。
(そうやって、ずっとずっと僕だけを見ていればよかったのに。)
(君はずっとずっと、僕だけを憎んでいればよかった。)
(そう、僕だけを。)

「タトゥが完成するまで好きにさせてあげようかと思ったけど、やっぱり駄目だね。このまま連れて帰るよ。」
「…!ふ、ざけるな…っ!!」
「それは僕の台詞だよ。あんなヤツに絆される君が悪い。」
なおも逃れようと暴れる彼の首筋に噛み付く。途端上擦った悲鳴が聞こえて心地良い。
早く連れて帰ろう。そうして檻の中に閉じ込めてずっとずっと愛してあげよう。
背後から拘束するのではなくて正面から向き合ったなら彼はきっと、これまで以上に僕を憎んでくれるだろうから。
そうしたら、僕意外を見ることがどれだけ罪深いことか、分からず屋な彼もきっと分かってくれるだろうから。
そう、部屋が暗いから。背後から拘束しているから。

だから。



だから彼はこの手が赤く染まっていることを知らないのです。





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あとがき。

宴さまのリクでアルちゃんの隙に付け込むファントム、というお話でした。付け込んでなくない?という突っ込みは甘んじて受け付けます。
バッドエンド風味で、というご指定だったのでこんな感じに。風味ということだったので若干ぼかしてみました。
”ヤツ”はどうぞ脳内で好きなお相手を。はとさんはナナシのつもりで書いてましたがwww
宴さまお待たせして申し訳ありませんでしたー!よろしければお納めくださいませ・・・・・・

(2011.02.28)





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