永遠を、きみに。
重い瞼を押し上げる。豪奢な、けれど薄暗い天井が目に入った。
そのまま、どれぐらいだろう。その光景だけをぼんやりと眺めていたがやがてその異常な事態に気付く。
タトゥの侵食に、もう限界だろうと。だからずっとずっと前から決めていたように、永遠を生きる前に自ら命を絶った。筈だった。
なのにどうして。自分はどうしてこんな所で寝ているのか。見覚えのない天井。レギンレイヴではない。ならば此処は何処なのか。
最悪の可能性が頭を過ぎる。―――レスターヴァ。そんな。そんな、筈は。
ない。そう思い込もうとした瞬間を見計らったかのようにドアが開いた。そうして室内に入ってきたその人物に、希望が粉々に砕かれる。
「ああ、起きたんだね。良かった。」
「…ファン、トム。」
いつものように不気味な笑みを顔に貼り付けて、ベッドの端に腰を下ろす。
近づいてくる悪魔の姿に距離を取ろうとするが、途端全身を走った鋭い痛みに身体を起こすことすら叶わなかった。
「無理をしちゃ駄目だよ。かなり危なかったんだ。」
顔を逸らせばすぐさま顎を掴まれた。冷たい、冷たい手。死者の手。
「間に合って本当に良かった。タトゥの侵食のせいで体力も落ちてる。意識が回復するか五分五分だって医者も言ってたよ。いや、それよりなにより、
きみは自身に対する執着ってものが薄いから。」
だから帰ってきてくれて本当に良かったと。顎を掴んでいた手が頬のタトゥへと滑る。本能的な嫌悪が背を走った。
振り払いたいのに、身体が動かない。ぎしぎしと軋む関節は動き方を忘れてしまったかのよう。
逃げないと。逃げないと、死よりももっと酷い淵に引きずりこまれてしまうのに。
「っ、はなせ、」
「嫌だよ。」
首筋を、タトゥに添うように舌でなぞられる。嫌悪感の塊のようなその感触に耐え切れず悲鳴が口から漏れた。
掠れていて上擦った、みっともない悲鳴だった。
ああ、情けない。ファントムを倒すことも、生ける屍になる前に自害することすら出来なかった。挙句の果てこうして好き放題する仇敵を前に、
抵抗の一つも見せることが出来ない。
何て。…何て、情けない。
「よぉく分かったんだ。大事なものは、雁字搦めに鎖で縛って鍵をかけてしまっておかなければならないって。」
悪魔の声がどこか遠くに聞こえる。嫌だ。嫌だ、このまま目を閉じてしまったら、自分は。
「さぁ、もう少しおやすみ、アルヴィス君。…次に起きたときにはきっと、素晴らしい世界になっているはずだから。」
そうして意識が、世界が黒に沈んで―――、沈んで。
エンド・オブ・ザ・ワールド
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あとがき。
おおおお待たせしましたぁああぁーーーッッッ(スライディング土下座)
れんさまのリクエストでファンアルタトゥネタバットエンドでした。バッドエンド?うん。バッド……のはず…多分
れんさまお待たせして重ね重ね申し訳ありませんでした!駄文ですがどうぞお納めくださいませませ
(2011.06.13)