あなたのための紅茶を淹れましょう。





何も言わなくても満たされた紅茶のカップをぼんやりと眺める。ふと、水面に映った己と目が合って。どこか気まずくて目を閉じた。
「おや。おかわりは不要でしたか?」
「いや。…ちょっと、考え事をしてただけだ。…もらうぜ。」
口をつけると、すっかり慣れた味。微かな甘みと、程よい渋み。そうちょうど、甘い甘いクッキーが欲しくなるような。
香りも上品なこの紅茶は、消えてしまったこのゲームの本来の主の大好物であった。

消えてしまった?否、消してしまった、が正しいだろう。戦人は自嘲気味に口の端を上げた。
俺が無能なばっかりに、あいつを救えないまま死なせてしまった。
あいつだけじゃない。このゲーム盤の魔法すべてを、破壊させてしまうところだったのだ。
そんな自分が無限の魔女などと、あいつの名を継ぐなどと、笑わせる。

「…ロノウェは、さ。」
「はい。なんでございましょう。」
ちらりと見やると、やっぱり何を考えてるのか読めない笑顔。もっと単刀直入に言ってしまえば胡散臭い。
「………俺みたいのが主で、いいのか?」
思わず言ってしまってから後悔した。彼らはあくまで使用人。勿論ですと答えるしかないじゃないか。
それでも、自分の心の奥底に根をはる疑問であることは間違いなかった。
このゲームに、幕を下ろす。その決意に、些かの揺らぎもない。けれど、幻想の終焉への道のりに、何故彼らは力を貸してくれるのか。

俯いた自分に、苦笑する気配。
「なら戦人様は…どのようにお答えすれば、ご満足いただけますか?」
「…………っ、」
答えられる筈もない。それが自分でも分からないから聞いたのに。肯定されたいのか、拒絶されたいのか。
根幹からが曖昧だというのに。
「私は家具ですから。戦人様の望まれるようにお答えしたいと思います。…さぁ戦人様?私はどのようにお答えすればよろしいですか?」
モノクルの奥の蒼い瞳が、いたずらっぽく輝いて見える。あぁ、くそ、勝てない。
ずい、と無遠慮に近づいてきた顔を押し退ける。全くいちいちこいつは顔が近い。押しやられながらぷっくっく、と独特の人を小馬鹿にしたような笑い声。
「ああ!もう!もういい!」
すっかり忘れられていた紅茶のカップに口をつける。けれどもう大分飲み頃を過ぎてしまったようで。
「…お前のせいで冷めちまったろ。おかわり。」
「はい、我が主。今すぐに。」





悪魔と魔女のティータイム





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あとがき。

というわけで初ロノバトでした!難しいよロノウェえええっぇえぇえぇぇぇぇ!
書き慣れてない感が全面に出てしまった文で申し訳ないです緋月さま…!また気が向いたときにでもロノバトリベンジしてみたいと
思いますので、その時はまた生暖かい目で見てくださると幸いです。
ではでは、リクエストありがとうございましたー!

(2010.02.06)





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