初めて会った気がしない、なんて。
当然だろう。気の遠くなるような昔から、俺はお前のことを探していたんだから!



今日は俺の部屋でデュエルしようぜ、なんて言えば素直についてくる。
危ないなあ。知らない人についていっちゃいけないって、教わらなかったのかなあ。
出会ったばかりなのに精霊が見える奴だからって、簡単に信じて。変わらないなあ、そういう所は。


「…なんか広々してて淋しい部屋だな。」
「必要最低限の物しか持ってこなかったからな。あんまし色々持ってきても、持って帰るのだって大変だし。」
ふうん、と聞いてるんだか聞いてないんだかよく分からない返事。
お前はいつもそう。無意識に他人の領域に入ってくる癖して、自分の領域には踏み込ませない。
「必要最低限…って割に、何だよこれ。…鳥籠?」
窓際に置かれていたそれは、古びた鳥籠。中に何かが居た形跡すらない、空っぽの鳥籠。
光を受けても、輝く事を忘れてしまった空しい檻。
「何か飼うのか?」
「いや。…どうしても、欲しいものがあってさ。それは、そいつを入れるためのものさ。」
「欲しい…もの?」
己の言葉に、漠然と不穏なものを感じ取ったのだろうか。振り返った十代の目は、不安が宿っていた。

―――それは輝く太陽に雲がかかる様にも似て。


「…ヨハン?」
「初めて会ったのは、いつだったかなあ。ずっとずっと数えるのが面倒な程昔で、とにかくずっと昔から。なあ、ずっとずっと探してたんだよ?」
今度彼の瞳に浮かんだのは不安ではなく、恐怖であった。
言葉もなく後ずさる彼。…駄目だよ。逃がさない。
「ヨハン、お前…何か、変だよ。」
「どうしてそんな事言うんだよ。…ああ、俺が人間じゃないから?」
「人、じゃ…ない…!?」
窓に磔されたように。月光に濡れたお前が愛おしい。
そんな顔をしないで。これからはずっと傍にいてあげる。ずうっとずうっと、一緒にいような。
「何て言ったらいいかなあ。う〜ん、手っ取り早く死神って言やぁ分かるよな?」
死神、その単語に十代の表情が凍りつく。ありえないものを見る目。
先刻まで向けてくれていた温かな琥珀の名残は、最早どこにもなかった。
「何度転生を繰り返しても、お前の魂は気高くて、純粋で、温かくて。欲しくて欲しくてたまらなくて、ずうっと追いかけ続けてた。」
「…殺すのか。俺を。」
「そんな物騒な言い方はよしてくれ。魂だけ持ってくだけだよ。」
また受け入れてもらえないのかという寂寥感と、獲物を追い詰める時の高揚感がごちゃまぜになってなんだかおかしな気分。
じりじりと、何とか距離を取ろうとしていた十代だったが、ヨハンの目に捕らわれる。
日没のようにゆっくりと、ごく自然に。蒼から橙へ。その変化に気付いた時にはもう、遅かった。
「……っ、…!?」
「ほおら、捕まえた。」
動かない。自分の身体なのに、動かせない。頭の天辺から爪先まで、十代の身体は彼自身の物ではなくなっていた。
ヨハンが手を差し出せば、十代の意志とは無関係に彼の身体はヨハンの元へ素直に歩み寄る。
頬を両手で包まれる。好ましく感じていた筈の温もりが、今、こんなにも恐ろしい。
「…や、めろ……、」
「やだね。盾も騎士もいないこの千載一遇のチャンスを…俺が逃す訳、ねえだろ?」

至極ゆっくりとした動作で、口付けられる。
触れるだけの初めての口付けは、とても冷たい死の味がした。


ヨハンが口を離せば、十代の身体ははまるで事切れたかのように崩れ落ちる。
否、実際に彼は事切れていた。肌にはまだほのかに赤みは残っているが、時間の問題だろう。
十代の亡骸にはもう目もくれず、鳥籠を取る。



亡骸の傍を舞っていた紅い、紅い蝶をそおっと鳥籠に仕舞いこんで。…ヨハンは酷く優しく微笑んだ。





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4810祭投稿作品ダイゴダァ!
死神パロだというのに何故か3期冒頭設定。因みにヨハンの台詞にある盾と騎士は、覇王様とユベたんのことです。
盾=覇王様、騎士=ユベたんね。
最後の紅い蝶はどう見ても零の影響です本当にありがとうございました。サーセンBGMもつっこさんの蝶でした。

(サイトアップ:08.06.01)





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