砂糖を入れる?ミルクを入れる?それともレモン?
あなたのお気に召すままに、さぁ、優雅なティータイム。



「ほら。熱いから、気をつけろよ。」
ことり、と置かれた白いティーカップ。青と金で縁取りがなされている、上品なデザイン。
「…いい香りがする…。」
「だろ、だろ!?この茶葉は、俺のお気に入りなんだ!」
得意気に、ヨハンが言う。よっぽどお気に入りなのだろう。しかもティーバッグではなくて本格的な茶葉。
十代にとって紅茶はティーバッグで淹れるものが普通だったから、新鮮というか、違和感と言おうか。
そして一口飲んでみて、また違和感。
「………しぶい。」
「そこがいいんじゃねえか!」
盛大に顔を顰める十代に、ヨハンは口を尖らせた。お気に入りを3文字で否定されたことが余程ショックだったのか。
「……しょーがないな。ミルク持ってきてやるから、ちょっと待ってろ。」
「砂糖も〜。」
付け加えて十代が催促すると、やれやれといった感じで溜息を吐き、ヨハンは席を立った。


角砂糖をひとつ、ふたつ、みっつまで入れたところでヨハンから抗議の声が上がる。
「おまっ、そんなに入れんなよ!」
「いいじゃねえか。俺の自由だろ?」
更にミルクを注ぐ。乳白色になり、元の色を留めなくなった紅茶。
一口、口を付けるとまったりした甘みと、確かに存在を主張する渋み。
「うーん…まだ渋いな…。」
「頼むから元の味も尊重してくれよ〜…。」
とうとう頭を抱えてしまったヨハンに、流石の十代も罪悪感が湧く。けれど、飲めないものは飲めないのだから仕様が無い。
「すっげぇ、いい匂いなのに。これでもうちょっとでも渋いの無かったらな…。」
「分かったよ。…次からは甘めの茶葉で淹れてやる。」
「そうしてくれ。」

紅茶を飲むヨハンを、ちらりと見やる。
こういう何気ない動作の一つ一つがやけに王子様じみていて、それがカッコよくてそれがムカついたりもする。
ヨハンは女の子に人気がある。やっぱ女の子はこういう王子様っぽいところが好きなんだろうなと思う。
「…何だよ?」
彼を見ていたのを気付かれたのが気恥ずかしくて、慌てて十代は問うた。
「ヨハンは平気なのか?…こんな渋いの、砂糖も無しに。」
「…あぁ、俺は…、」
腰を浮かせたヨハンが、流れるような動作で十代の顎を掬い取り…十代が抗議の声を上げる暇もなく、口づけられた。
柔らかい唇の感触と、眼前に広がる蒼に、しばし呆然となる。脈絡もなしに、何なんだこの男恥ずかしいな!
「!ヨハ…!」
「だって、十代とのキスが甘すぎるからさ。他に甘いものなんて、もういらねぇよ。」
ばちこーん、と星が出そうなほどのウィンク。何なんだこの男全くもって恥ずかしいことこの上ない!!
赤くなった顔を見られたくなくて、紅茶に口を付ける。
少しだけ冷めた紅茶は、先程よりも何倍も甘ったるく感じられた。


(この、馬鹿野郎!大好きだ!畜生!!)





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あとがき。

4810祭投稿作品ダイニダァ!
何か誰もおかしくない普通の作品で、俺の文知ってる人はびっくりしたんじゃないでしょうか。どうしたのはとさん。
某hうろさんに甘いの書けとおどs…ごほん、お願いされたので、ネタ振ってもらいました。いつもネタありがとうhうろさん愛してる(迷惑)

(サイトアップ:08.06.01)





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